大嫌いの先にあるもの
「立花様、お待ちしておりました」

30代ぐらいの美容室の人がそう言って、丁寧なお辞儀をした。
気品のある綺麗な人だった。

「本日、立花様のお仕度をさせていただきます。美容師の田村でございます」

「た、立花です。お世話になります」

勢いでそう言ったけど、これから何が始まるの？お支度って何？

美容室の中を見るとウェディングドレス姿の花嫁さんが鏡の前に座って、お化粧をしてもらっていた。

まさか、花嫁になれって言うんじゃないよね？

それで全然知らない初対面の人といきなり結婚とかってないよね？

丁度そんな内容の映画を滝本さんに勧められて見たばかりだったから、心配になる。

「どうかなさいましたか？」

不安に思っていると、田村さんが聞いてくれた。

「いえ、あの、私、全然今日の事を聞いてなかったので。支度ってどんな感じになるんですか？」

田村さんがニッコリと微笑んだ。

「黒須様からは可愛らしく仕上げて欲しいと伺っております。ドレスもこちらで用意してありますから、ご心配はいりませんよ」

「あの、ドレスってまさかウェディングドレスとかではありませんよね？」

　田村さんが大きく瞬きをした。
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