大嫌いの先にあるもの
ドレスを着て、髪型はアップに作ってもらい、最後に眼鏡を外してお化粧をしてもらった。

鏡の前に座ってるのは自分ではなく、サーモンピンクのドレスが似合う、ふわふわで可愛いお姫様に見えた。

「とても綺麗ですよ」

田村さんの言葉が素直に聞ける。確かに綺麗だった。こんな自分がいたなんて知らなかった。

ずっと見ないで来た女性らしい自分。
お洒落をするのは悪い事のように感じていたけど、田村さんが私にかかっていた悪い魔法を今日は解いてくれた。

キラキラと輝くいつもと違う自分を見るのは楽しい。
今日は顔を隠す伊達眼鏡はいらない。メイクアップされた私で行こう。

「田村さんは魔法使いだったんですね。私がこんなに綺麗になるなんて思わなかった」

鏡越しに田村さんの笑顔が見えた。

「この仕事は魔法使いになれるから楽しいんです。仕舞い込んである綺麗を表に引っ張り出すのはやりがいがありますから」

「ありがとうございます。今だけお姫様になれました」

「最後の仕上げがありますよ」

田村さんは華やかなデザインの真珠のネックレスとイヤリングをつけてくれた。そのアクセサリーに見覚えがある。
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