大嫌いの先にあるもの
「お迎えに参りました」

美容室まで迎えに来てくれたのはスーツ姿の相沢さんだった。相変わらずリムレス眼鏡の奥の表情は読めない鉄仮面だった。

それにしても何で相沢さんが私の迎えに?

「相沢さん、どうしてここに?」
「これも給料の内ですから」

眼鏡の奥の瞳が珍しい物を見るみたいに、じっとこちらを捕らえる。
その視線が気まずい。
お姫様みたいな恰好が変なのかな?

「あの、似合ってませんか?」

「いえ、大変お美しいですよ。普段の立花さんとは別人のようです」

美しいなんて言葉が相沢さんの口から出るとは思ってなかったので、照れくさくなった。

「自分でも戸惑ってます。こんな格好をして」

「自信を持って下さい。お姉さまも美しい方でしたが、あなたも負けていない。今日は特に輝いてますよ」

お姉さま……。

「相沢さん、姉の事を知ってるんですか?」

「ええ、ニューヨークで何度かお会いしました」

「相沢さんもニューヨークにいたんですか?」

「その話は車の中でしましょう。黒須が待っています」

車という事はホテルから出るのか。
一体どこに連れて行かれるんだろう。
< 91 / 360 >

この作品をシェア

pagetop