大嫌いの先にあるもの
いつになったら黒須は来るんだろう。

おじさんがいなくなってもう十分は経ってそう。

ここにいてくれって言われたけど、お腹空いたな。なんかいい匂いするし。
これはお肉の焼ける匂いだ。あっちのコーナーで料理人が焼いてるのがさっきから目につくんだよね。

好きな物を楽しんで下さいって言われたけど、お料理取りに行っていいのかな?黒須が来るまではここにいるべき?お腹すいたなー。朝早かったからご飯食べてないし、今はもうお昼だし……黒須はまだ?

周りを見るけど、黒須の姿は見当たらない。
どこにいるんだろう。もう帰ろうかな。でも、ペナルティだしな。

「お代わりいかがですか?」

空のフルートグラスを持ってると、私の前を通ったウェイターに声をかけられた。

「あ、お願いします」

空のグラスを渡して、新しいのをもらった。これで5杯目のシャンパン。喉が渇いてるからどんどんすすむ。
シャンパンってアルコール度数ビールと同じぐらいだったっけ?なんか気持ち良くなって来たな。すきっ腹だから酔いが回ったのかな?

えへへ。なんだろう。緊張でいっぱいだったのに、気持ち良くなってきた。黒須はまだかな。黒須、黒須……あっ、黒須だ!

カッコイイ。黒タキシードが似合ってる。

颯爽と歩いてる姿がモデルみたい。足長いな。顔ちっちゃいな。マネキンみたい。やっぱり黒須は悪魔だ。見ただけで心臓がバクバクいってる。どうしよう。壊れそう。

あ、黒須がこっちを見た。私に気づいた。微笑んだ。うわっ、めっちゃカッコイイ。素敵過ぎる。

うん?誰、あの女?黒須が赤いドレスの女性の前で足を止めた。こっちに来てくれないの?私、このまま放置されるの?
< 97 / 360 >

この作品をシェア

pagetop