だいすきボーイフレンド
改札を抜けてホームへと続く階段を降りる晴人の背中が、なぜか今日はいつもと違って見えて、というよりこんなにちゃんと晴人自身をまじまじと見つめたことがなかった。

今更ながら、こんな身長だったんだな、とか、意外と手がキレイだったんだな、とか新たな発見をする。

ホームで並ぼうとすると、また私を優しく押しながら「もう少し奥行こうよ」と言って少し人が少ない方へと促してきた。

「なあ」と私は晴人に声を掛ける。

「なに」
「さっきの、あれどうするん」
「あれって付き合うってこと?」
「うん」
「付き合ったからって俺たち何か変わることあるんかな」

晴人は髪をいじりながら、まだ電車が来そうにない線路へと視線を投げる。

そう聞かれると、何とも言えず。

電車が前の駅を出たらしい。
隣で晴人が体をグルングルンねじりながら、ほんの少しの時間を潰す。

「好きな人とか出来たら、その時はサクッと別れよ」

私が言うと、やっと晴人は眠そうな目を私に向けた。

「せやね」

小さく言う。

電車がホームに入ってきた。心なしか少し後ろに下がる。

晴人が彼氏かあ。

私はぼんやりとそんなことを考えつつ、晴人が今まで散々唱えてきた恋愛観や理想のタイプを頭の中で巡らせては、絶対にその相手は私じゃない、と思う。

電車のドアが開くと、なぜか晴人は私の手首を取って車内へと導いてくれた。

今までこんなことしたことなかったのに、なんなん急に。

照れ臭さで耳までいっぱいになる感覚で反応に困ってると、ハラリと手は放された。
意外と車内は空いていて、晴人は一席空けて座ったから、私はその流れで晴人の隣に座る。

< 10 / 59 >

この作品をシェア

pagetop