だいすきボーイフレンド
「なんかある?」
「なんかあるって何が」
「部屋に、食べ物とか飲み物」
「もしかしてうちで寛いでくつもりなん」
「せやで、彼氏やし」

晴人が笑って私を見た。

「なんもないで、食パンとパスタしか」
「じゃあ買ってこうや」

さっきから隣同士当たってる晴人の右手と私の左手。晴人が全然よけようとしないから、私もよけられず、ずっと重なったまま。

こんなん気にする方がおかしいんか。

「あれやな」と晴人がこっちに顔を向ける。

「恋人同士やし、次の日仕事早い時部屋泊まらせてもらうわ」
「はあ?」
「ええやん」

都合いい。
心なしか、晴人が体を近づけてきたのか腕まで当たる。

目が合った。

わざと?

「晴人、私のこと好きやんな」
「好きやで」
「それはどういう意味で」
「人として」

人として、って坂本龍馬とか織田信長とかその部類やん。
その目を覗くと、「ん?」とした表情をする。

「本当に付き合うつもりなん」

私がそう聞くと、ヘラヘラと笑ってる晴人の口元が少し鈍い動きとなった。

「おう、まあな」

そう言った後、また誤魔化すようにヘラヘラと笑う。

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