だいすきボーイフレンド
「なんなん、それは」
「なんなんってなに」
「なんでホイホイ付き合うこと受け入れてるん」
「だって翔平めっちゃ困ってたやんか」

快速だから最寄駅の一個前の駅を通過するのをぼんやりと窓の向こうに確認する。

「あんなん困ってるわけちゃうやん、ただ面白がってるだけやで」
「まあ、そんなに嫌やったら振ってくれても全然ええで」

電車がスピードを落とす。

「いや、振るっていうか」

その後の言葉に困ってると、電車がゆっくりと停止した。
私よりわずかに早く晴人の方が立ち上がる。ほら、自分の駅かのような振る舞いで、エスカレーターの位置も分かってる。

何年付き合ってるカップルなんや。

エスカレーターの2段上に乗った晴人が私の方を向いてきた。

「部屋で飲み直す?」
「めっちゃ自分家みたいなテンションで言うな」
「いやもう、彼女ん家なんて自分家みたいなもんっしょ」

晴人はエスカレーターを降りると私にペースを合わせて並んで歩いてきた。

意外と身長高くて、隣を彼氏ヅラして歩かれると少なからずそれっぽく感じてしまう。

出口脇にあるコンビニに晴人は入っていった。なんなん。

付き合うってなんなん。
< 12 / 59 >

この作品をシェア

pagetop