だいすきボーイフレンド
まさかこんな展開になるとはつゆほども思わず、私の部屋は16時過ぎに嵐のように身支度を終えた状態のままで、まあまあ汚かった。

「いやいや今さら嘘つかんでええよ」

急いで洗面台周りを片付ける私の背中に、晴人が言う。

「嘘やなくて、今日集合早かったからバタバタしたんや」
「涼香もバタバタしたんや」
「待ち合わせ5時は早い」

「これどこに置けばいい?」と晴人は私が飲み干した空のペットボトルを手に聞いてきた。私は急いでその手からペットボトルを奪う。

「いいって、そんなんやらんで、そこらへん座っててや」
「だって汚いやん」
「だからそっちが勝手にのしのし上がってきてんやん」

ローテーブルの下に落ちてるダイレクトメールをかき集める。

「だから申し訳ないから片付けよう思て手伝ってんやんか」
「ええよ、そこに座っといて」

晴人が犬みたいに口をへの字にして立ち尽くす。

座っといて言うたやん。

私が見上げると、分かりやすくしょんぼりしてる。

「なんなん」

私も手を止めてゆっくり立ち上がる。

「ごめん」

はあ?
そんなんで謝るくらいなら家の前で帰ってってくれ。

「いいから、酒飲んだりなんか食べたりしてて」

私がそう言うと頷いて、部屋の隅でチョコかかった柿の種を食べ始めた。

< 13 / 59 >

この作品をシェア

pagetop