だいすきボーイフレンド
何も、何もなかった。

花火大会どころか、一年を通して何もなかった。

夏が終わって、冬が来て、自由登校になって、私は猛勉強の日々に突入して、気付けば卒業式を迎える。

記憶にあるのは、桜舞う校庭と、晴人と翔平の姿。

「私と同じ大学やなんて残念やったな」

第一志望校に落ちた晴人にわざと明るく声を掛ける。

「高校も大学も一緒やなんて濃すぎる」
「仲良くしような」

そんな私たちを翔平は少し距離を置いて笑っていた。
私が翔平の方を見た時、やっと一歩近づいて口を開く。

「よう頑張ったな」

私の受験勉強を、一番近くで見ていたのは彼かもしれない。

「ありがとう」

そう返すと、彼はただ無言で頷いた。

私の淡い恋は終わった。
私と晴人は東京へと移った。
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