だいすきボーイフレンド
「行く行く」
「じゃあちょっと本探してくるわ」
「私も」

翔平は置きっぱなしにしてた本と荷物を取って、本棚の列を練り歩く。

私は本を検索かけて、レシートみたいな紙に示された位置図をもとに本を探す。

お互い重そうなバッグを肩にかけて、図書館を出ることとなった。図書館の外はあつい。

「夏の課題図書やな」

一週間ぶりの翔平との再会。
あの日以来だった。

「晴人とはどう、仲良くやってる?」

翔平がニヤニヤとした表情を浮かべてる。

「まあまあ、ぼちぼちかな」
「ぼちぼちってなんや」

告白された日の夜、私はろくな返事もせず、一緒に寝た。ただの添い寝やけど。

たまに晴人が体に触れてきたり、密着してきて、そして晴人と暗闇で目が合えば普通にキスしてきて、なんか、変やった。

かわいい子と付き合いたいと嘆いてた晴人はどこ行ったん。

私はお酒を飲みながら適当にそんな話を聞き流してるだけの時間が好きだったはず。

「晴人と涼香は絶対合ってると思うけどな」
「合ってる言うても、それ人間同士の相性と恋人同士の相性はまた別やん」
「え、俺のこと責めてます?」

翔平は振り向いてきて笑う。

晴人はすごく私のことを気にかけるようになった気がする。

今まで通りでいいのに。

家の前で「じゃねー」と去ってくくらいでいいのに。

「なんか晴人が恋人っぽい感じにしてくる」
「なんやそれ、それの何があかんねん」

翔平が笑う。

「そういうガラじゃないっていうか、そういう間柄ちゃうやん」

って思い込んでいたのは私だけだったのかもしれないけど。

「涼香は晴人のこと、そんな好きじゃないん?」

晴人と付き合っていながら、こんな話を翔平に言うなんてフェアじゃない。
あの日、あの告白に答えるべきだったんだ。

私はあの飲み会に行く前、久しぶりに翔平に会うからって散々洋服も迷って、化粧に時間かかって。
あの日の、あの時の気持ちに、自分でも気付いてたはずで。

「翔平って今彼女とかいんの」
「おらんよ」

< 21 / 59 >

この作品をシェア

pagetop