だいすきボーイフレンド
目が合った。

よう、「かわいいで」を人の目を見ながら表情も変えずに言えるな、この男は。

と思ったら、少し照れたのか目を逸らした。

「俺そんくらい全然好きやで。まあ俺の好みはどうでもええか」
「晴人の元カノたち、みんなガリガリやねんて、ガリガリで色白くて胸だけあんねん」
「それ整形ちゃうん」

あ、また目が合った。と思ったら、その目は私の目を通り越して背後に向かう。

「送ってくれてありがとう」

駅に着いていた。はやい。

「ううん、晴人のお礼の代わり」
「ヘッドセットの」
「ヘッドセットの」

翔平が何か言いたそうな目を向ける。

「なに」と思わず聞いてしまった。

「俺、ずっと嘘ついてたことあんの、今思い出した」
「嘘?なにそれ」
「高校ん時、花火大会行ったの覚えてる?」

突然の花火大会というパワーワードに頭が固まる。

「覚えてるよ」
「あれ、晴人誘った言うたやん、俺」
「ああ、2連チャン模試で断られたやつな」
「うん」

人がドッと降りてきた。翔平の背後が一気に賑やかになる。ふと翔平が一歩私に近づいた。

「あれ、嘘」

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