だいすきボーイフレンド
私は意外と近くにいる翔平のその顔を見上げる。

「俺、花火大会に晴人のこと誘ってない」

「卑怯やろ、晴人の気持ち知っててさ」と続けて笑う。

「何、晴人の気持ちって」
「晴人、あいつも全部計算やで」
「だから何がよ」
「志望校の並び見たら分かるやん。絶対無理な大学の次が、なんで涼香と同じ大学の同じ学部やねん」

脳の中でグルグルといろんな記憶が混ざり合って、同時に胸の中でグルグルといろんな感情が混ざり合う。

「二人が揃って東京行く言うた時に、俺は失恋したようなもんや」
「失恋って」
「俺、好きやったよ」

この人はなんでこんなこと、サラッとここで言えちゃうんやろ。

「またそういう顔すんねんな」

私はきっとまた困った顔をしてたんだと思う。

「もう時効やろ」と翔平は笑い流す。

「今は?」

私が聞いた時に限って、なぜか人が減ってシンと静かになるのはなんでやの。

翔平の優しい目がまっすぐ私を見てきて、その口がゆっくり開いた。

「このままうち来る?」

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