だいすきボーイフレンド
私は返す言葉が見当たらなくて「とりあえずまあ上がったら」と翔平を部屋に上げた。

「このタイミング?」と翔平が笑う。

こくんと頷いて、私は狭い部屋のベッドに座る。
翔平は部屋を一瞥して、一瞬床に座ろうかと考えたような顔をして、私と目が合ったから私の隣に並ぶような形でベッドに座る。

シンと静まり返る部屋。
さっきまで晴人がいた部屋。

「最初からこれで良かったんちゃうん」

あの日、東京で再会した日から、翔平とこういう形で一緒になっていれば良かったのかもしれない。

「たぶん、もう戻れんくなるよ?一番晴人が怖がってたのはそれやろ」

優しいけど、全然笑ってない翔平の目を見る。

「俺はもう全部なくなるくらいなら、何もないのがいい」
「ずるいやん、それ」
「だから言うたやん、俺最低な男やって」
「私たち、ずっと一緒になれへんやん」
「そやな、お互い一生片想いやし、俺はそれでいい」

優しいのか、冷たいのか分からない人。
目はいつも笑ってるのに、その奥で笑ってない。

「私の想いはどうなるん」

教室の端にいた翔平を、晴人が繋いでくれた関係を。私が恋焦がれてきたものはどうなるん。

「時間とか他の男が解決してくれるんちゃうん」
「してへんやん、何も解決してへんやん」
「してへんな」

隣でうんうんと頷く。

「俺は今も好きやで、ずっと」

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