王太子殿下、「『戦利品』のおまえは妻として愛する価値はない」と宣言されるのですね。承知しました。わたしも今後の態度を改めさせていただきます
レイ?レイって長ったらしい名前の略よね?
外観はボロボロだけど、中は住める程度に修繕されている。二階建てだから、一階にいるかぎりは雨露をしのぐことは出来るはず。
視界に入っているかぎりの窓には、ガラスがはまってはいる。だけど、ヒビが入っていたり割れているものがほとんどである。
こんな状態だと、冬の寒さは厳しいかもしれないわね。とはいえ、それも居間っぽい部屋にある暖炉を修繕さえすれば、どうにかしのげるでしょう。
それとも、このベシエール王国の冬はそんなに寒くないのかしら?
はたして、わたしは冬の寒さを体験出来るくらいこの王国にいることが出来るのかしら?
そんなとりとめのないことを考えつつ、いまにも脚が折れてしまいそうな長椅子に腰かけてみた。
「ギギギッ」
世にも怖ろしい音を立てたけど、わたしの体重をかろうじて受け止めてくれた。
「すまない。あまりいい紅茶の葉ではないんだ」
彼は、長椅子同様ヤバそうなローテーブル上に紅茶のカップとポットを置いた。
それから、慣れた手つきでポットからカップに注いでくれた。
わずかな湯気とともに、ふんわりと香りが漂いはじめる。
アールグレイね。
お礼を言いたいところをグッとガマンし、カップを手に取り一口飲んだ。
真っ白なカップと受け皿とティーポットは、欠けていない。ヒビも入っていない。
ティーセットはまともである。周囲がボロボロなだけに、違和感がある。
美味しい。彼が言った通り「あまりいい紅茶の葉じゃない」のだとしたら、彼の淹れ方が上手いのね。
「レイというんだ。きみは?」
「え、なんですって?」
紅茶のことをかんがえていて、彼の言葉をきき逃してしまった。
彼はローテーブルをはさんだ向かいの長椅子で、美しい顔をわずかに右に傾けている。
「おれは、レイだ。きみの名は?」
彼は、口の形を大きくして言った。それこそ、まるでわたしが三歳児であるかのように。
それにしても、レイですって?レイって、レイ何なの?
彼の中途半端な名乗り方に、モヤモヤ感が半端ないわ。
「エリ、エリよ」
ほんとうはエリカだけど、わたしも中途半端に名乗っておいた。
どうせレイっていっても、長ったらしい名前を略しているんでしょうから。
「それで、どうしてあそこに?」
彼はタキシードのジャケットを脱ぎ、長椅子の背もたれにかけた。
「あそこ?ああ、バラ園のこと?バラ園があったからのぞいてみただけよ。それが何かいけないことなの?」
本気でムッときてしまった。だから、悪女のふりではなくマジで不機嫌な言い方になってしまった。
「これは失礼。王宮でバラを愛でるほど、優雅な気質を持った人はいないみたいだからね」
「なるほどね。剣やナイフで斬り合うっていう暴力的なことをする人はいても、優雅な感性を持っている人はいないわけね?しかもそんな礼服を着用して暴れる人なんて、ね」
「これは一本とられたな、エリ。って、エリッて呼んでいい?これは、そうだな。昨夜のパーティーに出席しそこねてね。ウロウロしている間にバラ園で暴漢どもに出くわしたわけさ」
「はいいいい?一晩中、王宮内をウロウロしていたわけ?」
呆れたわ。三歳の子どもでも、もっとまともな言い訳をかんがえつくわよ。
ダメダメ。彼は胡散臭すぎる。胡散臭すぎてめまいがするくらい。
ぜったいに関わり合いになっちゃダメよ、わたし。
視界に入っているかぎりの窓には、ガラスがはまってはいる。だけど、ヒビが入っていたり割れているものがほとんどである。
こんな状態だと、冬の寒さは厳しいかもしれないわね。とはいえ、それも居間っぽい部屋にある暖炉を修繕さえすれば、どうにかしのげるでしょう。
それとも、このベシエール王国の冬はそんなに寒くないのかしら?
はたして、わたしは冬の寒さを体験出来るくらいこの王国にいることが出来るのかしら?
そんなとりとめのないことを考えつつ、いまにも脚が折れてしまいそうな長椅子に腰かけてみた。
「ギギギッ」
世にも怖ろしい音を立てたけど、わたしの体重をかろうじて受け止めてくれた。
「すまない。あまりいい紅茶の葉ではないんだ」
彼は、長椅子同様ヤバそうなローテーブル上に紅茶のカップとポットを置いた。
それから、慣れた手つきでポットからカップに注いでくれた。
わずかな湯気とともに、ふんわりと香りが漂いはじめる。
アールグレイね。
お礼を言いたいところをグッとガマンし、カップを手に取り一口飲んだ。
真っ白なカップと受け皿とティーポットは、欠けていない。ヒビも入っていない。
ティーセットはまともである。周囲がボロボロなだけに、違和感がある。
美味しい。彼が言った通り「あまりいい紅茶の葉じゃない」のだとしたら、彼の淹れ方が上手いのね。
「レイというんだ。きみは?」
「え、なんですって?」
紅茶のことをかんがえていて、彼の言葉をきき逃してしまった。
彼はローテーブルをはさんだ向かいの長椅子で、美しい顔をわずかに右に傾けている。
「おれは、レイだ。きみの名は?」
彼は、口の形を大きくして言った。それこそ、まるでわたしが三歳児であるかのように。
それにしても、レイですって?レイって、レイ何なの?
彼の中途半端な名乗り方に、モヤモヤ感が半端ないわ。
「エリ、エリよ」
ほんとうはエリカだけど、わたしも中途半端に名乗っておいた。
どうせレイっていっても、長ったらしい名前を略しているんでしょうから。
「それで、どうしてあそこに?」
彼はタキシードのジャケットを脱ぎ、長椅子の背もたれにかけた。
「あそこ?ああ、バラ園のこと?バラ園があったからのぞいてみただけよ。それが何かいけないことなの?」
本気でムッときてしまった。だから、悪女のふりではなくマジで不機嫌な言い方になってしまった。
「これは失礼。王宮でバラを愛でるほど、優雅な気質を持った人はいないみたいだからね」
「なるほどね。剣やナイフで斬り合うっていう暴力的なことをする人はいても、優雅な感性を持っている人はいないわけね?しかもそんな礼服を着用して暴れる人なんて、ね」
「これは一本とられたな、エリ。って、エリッて呼んでいい?これは、そうだな。昨夜のパーティーに出席しそこねてね。ウロウロしている間にバラ園で暴漢どもに出くわしたわけさ」
「はいいいい?一晩中、王宮内をウロウロしていたわけ?」
呆れたわ。三歳の子どもでも、もっとまともな言い訳をかんがえつくわよ。
ダメダメ。彼は胡散臭すぎる。胡散臭すぎてめまいがするくらい。
ぜったいに関わり合いになっちゃダメよ、わたし。