王太子殿下、「『戦利品』のおまえは妻として愛する価値はない」と宣言されるのですね。承知しました。わたしも今後の態度を改めさせていただきます
ムカつく奴
目が覚めたのは、物音がしたからである。
すぐに覚醒した。なぜなら、室内に人の気配を感じたから。
感じたときには上半身を起こしている。
悲鳴をあげそうになったけど、必死に呑み込んだ。
驚くべきことに、寝台のすぐ横に人が立っているのである。
「いくらなんでも失礼すぎるわ」
さすがのわたしもカチンときた。以前のわたしでもカチンときたはずだ。ただ、以前は怒りをあらわさなかっただけである。
思わず、言葉をあらためることも忘れて非難してしまった。
いつからいたのだろう。ということは、わたしの寝顔を眺めていたことになるわけよね。
いったい、どういうつもりなの?
そんなに長時間じゃなかったはず。だけど、もしかしたらイビキをかいていたり寝言を言ったり歯ぎしりをしていたかもしれない。
いいえ、そこじゃないわね。
そもそも女性の部屋に無断で入ってきて、眠っているのをじっと見下ろしたりする?
そんなことフツーするの、王太子殿下?いいえ。夫であるはずのあなたは、平気でそんな非常識なことをするわけ?
「殿下、どういうつもりなの?」
何の感情も浮かんではいない王太子の美貌に向かって問い詰めた。
「ノックはした」
「はあ?」
『ノックはした』、ですって?
それで?返事もないのに入ってくるわけ?
それが例え返事がなく扉を開けたとしても、部屋の主が眠っていたらフツーは入って来ないわよね。
やはり、彼はフツーじゃないのかしら?
図書室での密談が思いおこされる。
ちょっと待ってよ……。
急に怖くなってきた。
もしかして、バレているの?
そうではなく、疑われていて確かめるとか揺さぶりをかけに来たのかしら?
これまで、王宮で彼とすれ違ったことすらなかった。それどころか、遠くいるのさえ見かけたことがない。視界の片隅にチラついたこともない彼が、いきなり部屋を訪れて来て寝顔をじっと見つめるだなんてこと、あるわけないわよ。
それこそ緊急の用事か、あるいは捜している人物を見つけたのでないかぎり。
大丈夫。怖れちゃダメ。がんばるのよ、わたし。
「ノックはしたって、返事がなければフツーは入室しません。ちょっと、そんなにジロジロ見ないで」
自分では噛みつくような勢いで責めているつもりだけど、もしかしたら声が震えていたかもしれない。
「死んでいるのではないかと思ったのだ」
「はああああ?」
ああ、もうっ!この男、めちゃくちゃムカつくんですけど。
想像も出来ないような返答ばかりじゃない。
しかも、無表情でだなんて。
「ああ、なるほど。それはお気の毒さまでした。死んでいた方がよかったでしょうに。死んでいなくて申し訳ないわ」
怒りは、かえってわたしに勇気を与えてくれる。
辛辣に返してやった。
彼が寝台から一歩下がったので、さっと寝台からすべりおりて彼の前に立った。
ああ、しまった。
寝間着代わりのシャツとズボンは、一番ボロボロのを使用している。
彼がわたしを頭の先から爪先まで見つめている。
見下すようなその視線に、またしても怒りを覚えてしまう。
そうだわ。彼に服を買わせようと思っていたんだっけ。
すぐに覚醒した。なぜなら、室内に人の気配を感じたから。
感じたときには上半身を起こしている。
悲鳴をあげそうになったけど、必死に呑み込んだ。
驚くべきことに、寝台のすぐ横に人が立っているのである。
「いくらなんでも失礼すぎるわ」
さすがのわたしもカチンときた。以前のわたしでもカチンときたはずだ。ただ、以前は怒りをあらわさなかっただけである。
思わず、言葉をあらためることも忘れて非難してしまった。
いつからいたのだろう。ということは、わたしの寝顔を眺めていたことになるわけよね。
いったい、どういうつもりなの?
そんなに長時間じゃなかったはず。だけど、もしかしたらイビキをかいていたり寝言を言ったり歯ぎしりをしていたかもしれない。
いいえ、そこじゃないわね。
そもそも女性の部屋に無断で入ってきて、眠っているのをじっと見下ろしたりする?
そんなことフツーするの、王太子殿下?いいえ。夫であるはずのあなたは、平気でそんな非常識なことをするわけ?
「殿下、どういうつもりなの?」
何の感情も浮かんではいない王太子の美貌に向かって問い詰めた。
「ノックはした」
「はあ?」
『ノックはした』、ですって?
それで?返事もないのに入ってくるわけ?
それが例え返事がなく扉を開けたとしても、部屋の主が眠っていたらフツーは入って来ないわよね。
やはり、彼はフツーじゃないのかしら?
図書室での密談が思いおこされる。
ちょっと待ってよ……。
急に怖くなってきた。
もしかして、バレているの?
そうではなく、疑われていて確かめるとか揺さぶりをかけに来たのかしら?
これまで、王宮で彼とすれ違ったことすらなかった。それどころか、遠くいるのさえ見かけたことがない。視界の片隅にチラついたこともない彼が、いきなり部屋を訪れて来て寝顔をじっと見つめるだなんてこと、あるわけないわよ。
それこそ緊急の用事か、あるいは捜している人物を見つけたのでないかぎり。
大丈夫。怖れちゃダメ。がんばるのよ、わたし。
「ノックはしたって、返事がなければフツーは入室しません。ちょっと、そんなにジロジロ見ないで」
自分では噛みつくような勢いで責めているつもりだけど、もしかしたら声が震えていたかもしれない。
「死んでいるのではないかと思ったのだ」
「はああああ?」
ああ、もうっ!この男、めちゃくちゃムカつくんですけど。
想像も出来ないような返答ばかりじゃない。
しかも、無表情でだなんて。
「ああ、なるほど。それはお気の毒さまでした。死んでいた方がよかったでしょうに。死んでいなくて申し訳ないわ」
怒りは、かえってわたしに勇気を与えてくれる。
辛辣に返してやった。
彼が寝台から一歩下がったので、さっと寝台からすべりおりて彼の前に立った。
ああ、しまった。
寝間着代わりのシャツとズボンは、一番ボロボロのを使用している。
彼がわたしを頭の先から爪先まで見つめている。
見下すようなその視線に、またしても怒りを覚えてしまう。
そうだわ。彼に服を買わせようと思っていたんだっけ。