王太子殿下、「『戦利品』のおまえは妻として愛する価値はない」と宣言されるのですね。承知しました。わたしも今後の態度を改めさせていただきます
会いたいからって、意味が分からない
「きこえなかった」
夫であるはずの男は、あいかわらず不愛想ですっとぼけている。
「きこえなかったですって?そんなはずはないわ。大声を張り上げたんですもの」
こんな幼稚なやり取りはしたくないけれど、バスケットを押し込みきるまで時間稼ぎをしたい。だから、彼を非難し続けた。
「声がよくきこえなかった」
彼はどうでもいいことに関して返答をしつつ、よりにもよってこちらに向かってきた。
まぁ、当然といえば当然なんだけど。
「わたしに近付かないで。関係のない女の寝室に押しかけ、押し入ってくるのが趣味なの?」
あともうちょっと。足がつりそうになるほど足をひねって爪先を伸ばし、バスケットをぐいぐい押し込み続ける。
「そういう趣味はない」
「はあ?じゃあ、どうして近づいてくるわけ?」
だんだん腹が立ってきた。
悪女のふりをするとか探りを入れたいとか、そんなことは頭からすっ飛んでしまった。
シンプルにムカついている。
「会いたいからだ」
そのたった一言を理解するのに、数秒間要してしまった。
「はあああああああ?」
思わず、バスケットを押し込み続けている動作を止めてしまった。
いまの一言は、あまりにも衝撃的だった。ある意味、理不尽な言葉だわ。
「意味がわからないわ。最初にわたしに言ったこと、覚えているの?そりゃあ、覚えているわよね?言われたわたしだって覚えているくらいだから」
彼は夫のはず。という以前に、王太子なわけだけど……。
わたしってば、彼をちっとも敬ってはいないわよね。
でもまぁわたしは悪女なんだし、そこは許されるわよね。
「……」
彼は、なぜか無言のままわたしをじっと見つめている。
居心地が悪いわ。
まるでこちらの内心を見透かすような瞳ね。
あたたかみも何もない。
「何とか言ったらどうなの?それとも、覚えていないから言いようがないのかしら?」
爪先の感覚だけでは、バスケットをちゃんと寝台と大理石の床との間に押し込めているかどうかわからない。
とりあえず、ここから離れなければ。
テラスのガラス扉の方へ行く?ダメね。それだったらローテーブルの方が自然よね。
「覚えている」
「覚えている?だったら、どうしてわたしに構うの?わたしたち、表向きだけの夫婦のはずよ。ああ、訂正。それすら違ったわね。わたしの祖国で順調に統治が行われるまでの契約結婚だったかしら?ああ、それも違うわね。それすら値しないんだったわ。利用価値がなくなったら、わたしはまたどこかに行かされる。つぎはどこかの国ではなく、この前の戦争の功労者にでも下賜されるのかしら?とにかく、愛することが出来ない、関わり合いになりたくないって宣言しているのに、夜分寝込みを襲うようなことはやめてほしいわ」
いやだわ。
ムカつくあまり、つい本音を吐いてしまった。
いっきに思いの丈をぶつけてしまったものだから、もうすこしで酸欠になるところだったわ。肩で息をししてしまっている。
っていうか、彼ってばいまのわたしの熱弁というよりかは心の叫びをきいてくれていたの?
彼は、あいかわらずだんまりを決め込んでいる。
まさか、立ったまま眠っているんじゃないでしょうね。
世の中には、瞼を開けたまま眠ることの出来る器用な人がいるみたいだし。
彼のあまりの無反応、無表情に勘繰ってしまった。
夫であるはずの男は、あいかわらず不愛想ですっとぼけている。
「きこえなかったですって?そんなはずはないわ。大声を張り上げたんですもの」
こんな幼稚なやり取りはしたくないけれど、バスケットを押し込みきるまで時間稼ぎをしたい。だから、彼を非難し続けた。
「声がよくきこえなかった」
彼はどうでもいいことに関して返答をしつつ、よりにもよってこちらに向かってきた。
まぁ、当然といえば当然なんだけど。
「わたしに近付かないで。関係のない女の寝室に押しかけ、押し入ってくるのが趣味なの?」
あともうちょっと。足がつりそうになるほど足をひねって爪先を伸ばし、バスケットをぐいぐい押し込み続ける。
「そういう趣味はない」
「はあ?じゃあ、どうして近づいてくるわけ?」
だんだん腹が立ってきた。
悪女のふりをするとか探りを入れたいとか、そんなことは頭からすっ飛んでしまった。
シンプルにムカついている。
「会いたいからだ」
そのたった一言を理解するのに、数秒間要してしまった。
「はあああああああ?」
思わず、バスケットを押し込み続けている動作を止めてしまった。
いまの一言は、あまりにも衝撃的だった。ある意味、理不尽な言葉だわ。
「意味がわからないわ。最初にわたしに言ったこと、覚えているの?そりゃあ、覚えているわよね?言われたわたしだって覚えているくらいだから」
彼は夫のはず。という以前に、王太子なわけだけど……。
わたしってば、彼をちっとも敬ってはいないわよね。
でもまぁわたしは悪女なんだし、そこは許されるわよね。
「……」
彼は、なぜか無言のままわたしをじっと見つめている。
居心地が悪いわ。
まるでこちらの内心を見透かすような瞳ね。
あたたかみも何もない。
「何とか言ったらどうなの?それとも、覚えていないから言いようがないのかしら?」
爪先の感覚だけでは、バスケットをちゃんと寝台と大理石の床との間に押し込めているかどうかわからない。
とりあえず、ここから離れなければ。
テラスのガラス扉の方へ行く?ダメね。それだったらローテーブルの方が自然よね。
「覚えている」
「覚えている?だったら、どうしてわたしに構うの?わたしたち、表向きだけの夫婦のはずよ。ああ、訂正。それすら違ったわね。わたしの祖国で順調に統治が行われるまでの契約結婚だったかしら?ああ、それも違うわね。それすら値しないんだったわ。利用価値がなくなったら、わたしはまたどこかに行かされる。つぎはどこかの国ではなく、この前の戦争の功労者にでも下賜されるのかしら?とにかく、愛することが出来ない、関わり合いになりたくないって宣言しているのに、夜分寝込みを襲うようなことはやめてほしいわ」
いやだわ。
ムカつくあまり、つい本音を吐いてしまった。
いっきに思いの丈をぶつけてしまったものだから、もうすこしで酸欠になるところだったわ。肩で息をししてしまっている。
っていうか、彼ってばいまのわたしの熱弁というよりかは心の叫びをきいてくれていたの?
彼は、あいかわらずだんまりを決め込んでいる。
まさか、立ったまま眠っているんじゃないでしょうね。
世の中には、瞼を開けたまま眠ることの出来る器用な人がいるみたいだし。
彼のあまりの無反応、無表情に勘繰ってしまった。