王太子殿下、「『戦利品』のおまえは妻として愛する価値はない」と宣言されるのですね。承知しました。わたしも今後の態度を改めさせていただきます
核心をついてきた
どうする?すっとぼける?
ダメ。しらばっくれるだけムダね。
「おまえは、噂とは違うな」
彼はわたしの恐怖心をあざ笑うかのように、まったく違うことを尋ねてきた。
しかも、おまえ呼ばわりである。
「だが、気の強い女は大好きだ」
彼の美貌に冷笑が浮かんだ。
その冷笑にゾッとした。その笑みに残酷さがありありと出ているからである。
「噂とは違う?気の強い女?」
図書室のことではなく、そっちの方に食いついてみた。
正直、どうしようかかんがえられない。そんな余裕は微塵もない。
「おまえは、どこの国に行ってもおとなしくて従順でまったく手がかからない、という噂だ」
「へー、そんな噂が?噂って、たいてい尾ひれがついたりねじ曲がったりするわ。それに、わたし自身はその噂通りだと思っているけど?噂とは違う、という意味がわからないわね」
鼻で笑ってやった。もちろん、まだまったくかんがえられていないので、内心は焦りまくっている。
すると、皇太子も鼻で笑った。
憎らしい態度だわ。顔がいいから余計に腹が立つ。
「それにしても、あなたがこんなにお喋りだなんて思いもしなかったわ。最初に会ったとき、あのときはたしか「戦利品」だの「契約婚」だったかしら?それとも期間限定だったかしら?とにかく、そんなことを一方的に長ったらしく言っていたわよね。それ以降は、まだ言葉をろくに話せない赤ん坊みたいに単語だけだった。だから、てっきり口をきく気がないのだとばっかり思っていたわ」
これはもう虚勢である。
とにかく、彼にバレないようにしなくっちゃ。
わたしがビビッているということを。
「そのシャツとズボンは?」
はい?またしても違う話題?
この男、思考が支離滅裂じゃない。
もっとも、そのお蔭で助かっているのかもしれないけれど。
「これ?そうだったわ。お礼を言うのを忘れていたわね。たくさんのドレスやシャツやスカートやズボンや靴をありがとう。だけど、どれもサイズが合わなかったわ。もったいないから、自分で手直ししなきゃならなかった。はっきり言って、有難迷惑ね。お礼というよりかは、クレームをつけないといけなかったわ」
「おまえの専属の侍女に頼んだ」
「ああ、彼女に?それで納得だわ。あそこまでサイズが違うなんて、それこそ奇蹟だから」
一生懸命夜なべ仕事をしているわたしを、侍女のレリアは部屋の扉に耳をくっつけて様子をうかがっていたんでしょう。
でっ、他の侍女たちと笑い飛ばしていたに違いない。
「そこに小屋があるのは知っているな」
はい?またしても違う話?
わが道を行きすぎているわよね。
彼はきっと、自分にしか興味がなく、飽きっぽくって気が散りやすい性質なのね。
こういう性質があるということを、心理系の本で読んだことがあるわ。
「しばらく前、その小屋である男がショベルで殴られた」
心臓が飛び跳ねた。
「おまえが殴っただろう?」
いきなり核心をついてきた。
っていうか、正解よ。間違いないわ。
「殴られた男は、最初殴られたショックで記憶を失っていた。が、記憶を取り戻した」
彼の冷え切った瞳から目をそらすことができない。
その瞳には、内心では怯えきっているのにポーカーフェイスを保っている自分が映っている。
「その男は、「王宮には似つかわしくないボロボロの衣服を着用した女に殴られた」と言った。そんな女、おまえだけだろう?」
「それで?」
声の震えを悟られないよう、一語だけ発した。
これだと、彼のことは言えないわね。
っていうより、ずっとおまえ呼ばわりされているけど、彼はわたしの名前を知らないんでしょうね。
「いっしょにいた男はどこだ?」
さらに尋ねられたくないことを尋ねてきた。
「いっしょにいた男?」
ごまかしたりとぼけたり出来るわけがない。だけど、そうとしか言えなかった。
ダメ。しらばっくれるだけムダね。
「おまえは、噂とは違うな」
彼はわたしの恐怖心をあざ笑うかのように、まったく違うことを尋ねてきた。
しかも、おまえ呼ばわりである。
「だが、気の強い女は大好きだ」
彼の美貌に冷笑が浮かんだ。
その冷笑にゾッとした。その笑みに残酷さがありありと出ているからである。
「噂とは違う?気の強い女?」
図書室のことではなく、そっちの方に食いついてみた。
正直、どうしようかかんがえられない。そんな余裕は微塵もない。
「おまえは、どこの国に行ってもおとなしくて従順でまったく手がかからない、という噂だ」
「へー、そんな噂が?噂って、たいてい尾ひれがついたりねじ曲がったりするわ。それに、わたし自身はその噂通りだと思っているけど?噂とは違う、という意味がわからないわね」
鼻で笑ってやった。もちろん、まだまったくかんがえられていないので、内心は焦りまくっている。
すると、皇太子も鼻で笑った。
憎らしい態度だわ。顔がいいから余計に腹が立つ。
「それにしても、あなたがこんなにお喋りだなんて思いもしなかったわ。最初に会ったとき、あのときはたしか「戦利品」だの「契約婚」だったかしら?それとも期間限定だったかしら?とにかく、そんなことを一方的に長ったらしく言っていたわよね。それ以降は、まだ言葉をろくに話せない赤ん坊みたいに単語だけだった。だから、てっきり口をきく気がないのだとばっかり思っていたわ」
これはもう虚勢である。
とにかく、彼にバレないようにしなくっちゃ。
わたしがビビッているということを。
「そのシャツとズボンは?」
はい?またしても違う話題?
この男、思考が支離滅裂じゃない。
もっとも、そのお蔭で助かっているのかもしれないけれど。
「これ?そうだったわ。お礼を言うのを忘れていたわね。たくさんのドレスやシャツやスカートやズボンや靴をありがとう。だけど、どれもサイズが合わなかったわ。もったいないから、自分で手直ししなきゃならなかった。はっきり言って、有難迷惑ね。お礼というよりかは、クレームをつけないといけなかったわ」
「おまえの専属の侍女に頼んだ」
「ああ、彼女に?それで納得だわ。あそこまでサイズが違うなんて、それこそ奇蹟だから」
一生懸命夜なべ仕事をしているわたしを、侍女のレリアは部屋の扉に耳をくっつけて様子をうかがっていたんでしょう。
でっ、他の侍女たちと笑い飛ばしていたに違いない。
「そこに小屋があるのは知っているな」
はい?またしても違う話?
わが道を行きすぎているわよね。
彼はきっと、自分にしか興味がなく、飽きっぽくって気が散りやすい性質なのね。
こういう性質があるということを、心理系の本で読んだことがあるわ。
「しばらく前、その小屋である男がショベルで殴られた」
心臓が飛び跳ねた。
「おまえが殴っただろう?」
いきなり核心をついてきた。
っていうか、正解よ。間違いないわ。
「殴られた男は、最初殴られたショックで記憶を失っていた。が、記憶を取り戻した」
彼の冷え切った瞳から目をそらすことができない。
その瞳には、内心では怯えきっているのにポーカーフェイスを保っている自分が映っている。
「その男は、「王宮には似つかわしくないボロボロの衣服を着用した女に殴られた」と言った。そんな女、おまえだけだろう?」
「それで?」
声の震えを悟られないよう、一語だけ発した。
これだと、彼のことは言えないわね。
っていうより、ずっとおまえ呼ばわりされているけど、彼はわたしの名前を知らないんでしょうね。
「いっしょにいた男はどこだ?」
さらに尋ねられたくないことを尋ねてきた。
「いっしょにいた男?」
ごまかしたりとぼけたり出来るわけがない。だけど、そうとしか言えなかった。