王太子殿下、「『戦利品』のおまえは妻として愛する価値はない」と宣言されるのですね。承知しました。わたしも今後の態度を改めさせていただきます
美貌の剣士
「大丈夫?」
やわらかい声を耳元のすぐ近くに感じ、ハッと我に返った。そのとき、ショベルの柄を握る両手に違う両手が重なっていることに気がついた。
「なっ……」
類稀なるっていうのかしら?信じられないほどの美貌が、わたしの顔をのぞきこんできている。
思わず、のけぞりつつ後退りしようとした。だけど、彼の手がわたしのそれを握っているので動けない。
「だ、大丈夫よ。それよりも、近いわ。近すぎる。離れてちょうだい」
これまでのわたしだったら、おどおどと「だ、大丈夫です」って伏し目がちに答えたところである。
だけど、いまのわたしは違う。悪女なのよ。態度がデカくって横柄で鼻持ちならない女なの。
だから、なけなしの勇気を振り絞って居丈高に注意をした。
「こ、これは失礼。意図せずきみに暴力を振るわせてしまったから、つい」
美貌にやわらかい笑みが浮かんでいる。
こんな美貌、かえって胡散臭すぎる。きっと性格が悪いとか、女遊びがすぎるとか、とにかく残念なところがあるはずよ。
彼は、さりげなくわたしの手からショベルを取った。そして、わたしの要望にそってくれた。
わたしから離れると、ショベルを小屋の壁に立てかけた。それから、あらためてこちらに向き直った。
「すまなかった。それから、助けてくれてありがとう」
彼は頭を下げ、謝罪と礼を言った。
悪女のわたしは、そんな彼をジロジロと眺めまわした。
ほんっとうに美貌だわ。異常というかありえないというか、こんなに美しい顔ってあるんだってシンプルに感心してしまう。
一つ一つのパーツをとっても、わたしのそれとはまったく違う。タキシードを着用している体も、そこそこ筋肉がついていていい体つきをしている。
服を脱がしたら、顔同様うんざりするほどの肉体美なんでしょう。
そこでふと気がついた。
彼は、いまは無腰である。ということは、さきほど盗み見たときに握っていた剣は、襲撃者から奪ったものだったのかもしれない。
彼を見た瞬間、彼が剣士ってどうして思ったのかしら?
彼の構えが、それほど堂にいっていたということ?
そのとき、小屋の向こうの方から複数の男性の押し殺した声がきこえてきた。
「こいつらの仲間だ。ここにいてはマズい。来てっ」
彼のつぶやきが耳に入ってくるよりもはやく、彼は手を伸ばすとわたしの右手首をつかんだ。
その強さに、思わず「痛いっ」って言いそうになった。だけど、ガマンするだけの機転はある。
ここで声を出したら、彼の表現するところの「こいつらの仲間」に気づかれてしまうでしょうから。
やわらかい声を耳元のすぐ近くに感じ、ハッと我に返った。そのとき、ショベルの柄を握る両手に違う両手が重なっていることに気がついた。
「なっ……」
類稀なるっていうのかしら?信じられないほどの美貌が、わたしの顔をのぞきこんできている。
思わず、のけぞりつつ後退りしようとした。だけど、彼の手がわたしのそれを握っているので動けない。
「だ、大丈夫よ。それよりも、近いわ。近すぎる。離れてちょうだい」
これまでのわたしだったら、おどおどと「だ、大丈夫です」って伏し目がちに答えたところである。
だけど、いまのわたしは違う。悪女なのよ。態度がデカくって横柄で鼻持ちならない女なの。
だから、なけなしの勇気を振り絞って居丈高に注意をした。
「こ、これは失礼。意図せずきみに暴力を振るわせてしまったから、つい」
美貌にやわらかい笑みが浮かんでいる。
こんな美貌、かえって胡散臭すぎる。きっと性格が悪いとか、女遊びがすぎるとか、とにかく残念なところがあるはずよ。
彼は、さりげなくわたしの手からショベルを取った。そして、わたしの要望にそってくれた。
わたしから離れると、ショベルを小屋の壁に立てかけた。それから、あらためてこちらに向き直った。
「すまなかった。それから、助けてくれてありがとう」
彼は頭を下げ、謝罪と礼を言った。
悪女のわたしは、そんな彼をジロジロと眺めまわした。
ほんっとうに美貌だわ。異常というかありえないというか、こんなに美しい顔ってあるんだってシンプルに感心してしまう。
一つ一つのパーツをとっても、わたしのそれとはまったく違う。タキシードを着用している体も、そこそこ筋肉がついていていい体つきをしている。
服を脱がしたら、顔同様うんざりするほどの肉体美なんでしょう。
そこでふと気がついた。
彼は、いまは無腰である。ということは、さきほど盗み見たときに握っていた剣は、襲撃者から奪ったものだったのかもしれない。
彼を見た瞬間、彼が剣士ってどうして思ったのかしら?
彼の構えが、それほど堂にいっていたということ?
そのとき、小屋の向こうの方から複数の男性の押し殺した声がきこえてきた。
「こいつらの仲間だ。ここにいてはマズい。来てっ」
彼のつぶやきが耳に入ってくるよりもはやく、彼は手を伸ばすとわたしの右手首をつかんだ。
その強さに、思わず「痛いっ」って言いそうになった。だけど、ガマンするだけの機転はある。
ここで声を出したら、彼の表現するところの「こいつらの仲間」に気づかれてしまうでしょうから。