天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
今日の献立はごはんとナスの味噌汁、切り干し大根のサラダにひじきの煮物、オクラとキノコの和え物にささみのチーズ挟み。

彼が箸をすすめるのを私はついじっと見つめ、自分の箸を握りしめていた。

「そんなに見てなくても大丈夫。すごく美味しい」

「よ、よかった〜」

「身体に良さそうなバランスと味付けだよ。今日の茉莉花みたいにホッとする」

今日の私みたい?
ハッとした。そういえばきちんと化粧をする前だった。さっきだって私の顔を見て固まってたんだった。
慌てて顔を手で隠した。今さらどうにもならないが、どうすればいいのかと頭を抱えた。

「何してるの?」

「ごめんなさい。今日家にいたのでほぼノーメイクなんです。啓介さんが来るのに本当にごめんなさい。私なんかが化粧しても大して変わらないけど、それでも化粧もしないで家に迎えるなんて失礼でしたよね」

「そんな茉莉花が「お帰りなさい」って言ってくれたからさっきグッときたんだ。なんだか家に帰ってきたって感じでホッとした。着飾るのではなく素の自分を見せてくれたみたいですごく嬉しくて抱きしめたんだ」

そんなふうに思っていたの?
私はてっきりこの顔に愕然としたのかと思った。でもそのあと抱きしめられた理由は確かによくわからない。もし彼の言う通りならと思うとホッとする。彼が家に入ってきて、彼の匂いを嗅いで安心したのは間違いない。私と同じホッとした感覚だったのならすごく嬉しい。
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