天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
「はい」

『茉莉花? どうしたんだ? 何かあったのかと心配していたんだ。今どこにいるんだ?』

焦ったようにいつもよりも早口で話す啓介さんの様子に気がつきふっと力が抜けた。
本気で心配してくれてる……私にはそう感じた。

「今は前住んでいた所の公園です」

『何でそんなところに? ひとりか?』

「無性に来たくなってしまって。でもこれから帰るところです。心配させてごめんなさい」

啓介さんは少し落ち着いてきたのか少し話し口調が穏やかになってきた。

『急にどうした? 何かあったからそこに行ったんだろう?』

確かに、何かなければここに来ないだろう。彼だってわかっているはず。
けどいじけているみたいで言いたくない。それにまだ彼にぶつけるだけの勇気もない。この優しい啓介さんをもう少し信じたい。

「なんでもないです。もう帰るので切りますね。心配かけてごめんなさい」

私はそのまま電話を切った。
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