天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
目の前に啓介さんいる。
彼は私をまた抱きしめて、耳元に顔を埋めた。

「茉莉花、ごめん。俺が会社に来てと言わなければ聞きたくもない話を聞かずに済んだよな。ごめんな」

私は顔を左右に振る。

「周りからそう思われてるんだってわかったけど、私が啓介さんを好きなことに変わりはなかった。ただ、啓介さんが佐倉さんの子供だと思って付き合っていたらと考えてしまったら負のループに入ってしまって今まで言われた言葉を疑ってしまったの」

「社長は関係ない。これは絶対だ」

「うん。好きって言ってくれてありがとう。私も、私も好き」

それだけ言うと啓介さんは埋めていた顔をそのままに耳元に唇を当ててきた。耳元から首筋に彼の息がかかりくすぐったい。いつまでも唇を当ててきてもどかしい。

キスがしたい……。

私は顔を埋めたままの啓介さんから距離を少し取ると私から彼に押し当てた。
慣れないことに勝手はわからないが、ただもどかしさで押し動かされた。
私からの突然のキスに驚いたようだったがすぐに形勢は逆転し、彼は主導権を握ってきた。
彼の舐めるような、咥えられるような緩急あるキスに翻弄され、唇が開いてしまったところに入り込んできた。
私の中で彼の舌が探り始める。
舌を絡ませられ、水音が静かな部屋に響く。
自分の音なのにすごくいやらしくてお腹の奥がゾクゾクした。
どうしたらいいかわからない大人のキスに私は彼について行くので必死だった。
角度を変えられ続く彼のキスに息が苦しくなる。
唇をつけたまま彼は「鼻で呼吸して」と言い、キスを続ける。

はぁ、はぁ……ん。

いつのまにか彼の首に手を回していて、彼も私の頭を押さえるように、唇を離してくれない。
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