天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
タクシーに乗り10分もすると大きなホテルに到着した。
ベルボーイが私の荷物を受け取ろうとするが、つい遠慮してしまい、その代わりに啓介さんが持つことになってしまった。

「ごめんなさい、私が持ちます」

「何言ってるんだ。ここまで来ただけで疲れただろう。さっきチェックインは済ませておいたから荷物を置いたら近くの店に行こうか」

私の手を取るとエレベーターへ向かった。
彼は7のボタンを押すとあっという間に到着した。

「こっちだ」

彼に手を引かれ、私は部屋へと案内された。
中に入るとカーテンが開いており目の前には夜景が広がっていた。
吸い込まれるように部屋を進み窓に近づくと外に出られるバルコニーがついていた。
観覧車が見え、足元には港の夜景が広がっていた。
あまりの光景に言葉を発することができず、無言で夜景を見つめていると、後ろから抱きしめられた。

「俺のこと忘れてない?」

窓を背に反対を向かされると啓介さんの顔が間近にあった。さっと唇を掠めるようなキスをされるとドキンと心臓が飛び出してきそうに跳ね上がった。

「さ、食事に行こうか」

彼はクローゼットに私の荷物を置いてくれた。すでに彼の荷物もそこに置かれており、並んだバッグを見て旅行に来たんだと実感する。
ふと見回すと部屋には大きなベッドが置かれていた。シングルではなく見間違うことのない大きなサイズで驚いた。
さっきは夜景に吸い込まれるよう窓際まで行ってしまったが、改めて見るとどうしてこれに気を取られなかったのかわからないくらいに大きなものだった。
< 140 / 167 >

この作品をシェア

pagetop