天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
大輔くんといえば私たちと小中学校が同じ同級生だ。

「あの大輔くん?」

「そう。あの大輔くん。2ヶ月くらい前に
偶然街でばったり会ったの。久しぶりに会ったからそのままお昼を食べにいったんだけど思いの外、話が弾んでね。その後からちょこちょこと連絡するようになったの」

蘭子の恋バナなんて初めて聞いた。
私も蘭子も奥手でなかなか前に出れず、好きになる人がいてもそれ以上進まないでいた。
蘭子に彼ができるなんて凄い!
なんだかドキドキして前のめりになった。

「大輔くんが彼になるなんてビックリでしょ? 私もまさか、って感じなんだけど小さい頃から知ってるからか苦手意識もなく話しやすくてさ。趣味もあって話してるうちに付き合おうって言われたの」

「きゃーっ! ドキドキする」
 
「茉莉花がドキドキしてどうするのよ」

「だって……大輔くんと蘭子でしょ? 言われてみたらお似合いかも。大輔くんって野球部のキャッチャーだったよね」

「うん。あの頃もかっこいいなぁとは思っていたけど野球部ってあの頃みんなに注目されてたじゃない? たまたま隣の席になった時に話したら周りの女子から睨まれたし、どこか一歩引いてたんだよね。けど大人になってそんなこと関係なくなってみたらとにかく話が合うの。一緒にいると話が尽きないの」

赤くなりながら話すその姿はなんだか可愛すぎてぎゅっと抱きしめたくなる。

「大人になってみると、大したことじゃなかったんだなと思うこともあの当時は大きなことに思えたし、いじめられたら嫌だなとか考えちゃってたよね」 

「うん。もったいないことしたなぁって思う。もっと話せばよかった。でも再会できてよかった」

「あー、なんかいいね! 再会できてよかった、だなんてさ」

いつもの蘭子と違ってはにかむ様子が本当に可愛くて、大輔くんにもこんな顔してるのかなと想像しただけで私までにやけてきた。
けど、ふと疑問に思った。

「ねぇ? 大輔くんと会う予定だった?」

「え?」

「ごめん。日曜日だし会いたいんじゃないの?」

蘭子は保育士、大輔くんだって社会人だから日曜日は休みなのではないか。それに付き合ってそんなに経っていないのなら尚更会いたいんじゃ……。
蘭子は何も言わないが、さっきから来るメッセージは大輔くんからのものだし、私は退散した方がよさそう。
本当は昨日の相談をしたかったけどまた今度にしよう。
私は荷物をまとめると立ち上がった。

「茉莉花、ゆっくりして行ってよ。大丈夫だから」

「付き合ったばかりの楽しい時期にそんな無粋なことしないよ」

「そんなこと言わないでよぉ」

恥ずかしそうに話す蘭子は幸せそうで私まで幸せな気持ちなれる。

「そのかわりまたゆっくり聞かせてね。今日は連れ出してくれてありがとう。楽しかったよ」

私は紙袋とバッグを手に家へと帰った。
< 16 / 167 >

この作品をシェア

pagetop