天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
並んでテレビの前に座り、話しながら観る歌合戦は母のいた頃を思い出された。
ここ数年寂しい年越しをしていたが、久しぶりに誰かと過ごすお正月。
啓介さんが買ってきてくれたつまみやビールを飲みながらのんびり誰かと過ごせるって何て幸せなんだろう。

「茉莉花眠い?」

0時になり啓介さんが顔を覗き込むように見てきた。

「まだ大丈夫だよ」

「なら近くの神社に行かない? ここに来る途中に大きな神社があったよね?」

駅からここまで15分以上離れており、途中にある神社には私も時々散歩の時に立ち寄ったりしている。広い境内には春になると紫陽花を始め花が多く咲き、つい足を伸ばしてしまう場所だ。

「行きます」

私は二つ返事で立ち上がった。
ふたりで暖かい格好をすると手を繋ぎ、神社へと向かうが、近所の人たちもみんなお参りに行くのか同じ方向へ進んでいた。
彼は私の手を握っていたがそのうちにコートの中に繋いだ手を入れてくれる。
緊張で汗をかくのではないかと心配になるが、彼は何でもないように繋いだ手の指先で私の手の甲をすりすりとしていた。
彼の仕草に喉の奥がぎゅっとなりもどかしい。私は彼の手をぎゅっと握りしめ、体を寄せた。

「茉莉花は何をお願いした?」

「健康? あとは内緒。啓介さんは?」

「俺は茉莉花とずっといられるように」

さらりと言う彼の言葉にまたぎゅっと締め付けられる。
私のお願いも彼と一緒だった。言葉にできなかったけど私はまた手をぎゅっと握りしめた。
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