天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
佐倉さんは私たちの様子を涙ながらに目を細めて見ていたが、喜んでくれみんなで改めて乾杯をした。

父親かもしれない佐倉さんと、これから家族になる啓介さん。3人で囲む食卓はとても楽しくかけがえのない時間だった。

帰り際、佐倉さんは私にこっそり耳打ちをした。

「茉莉花ちゃん、愛があれば人生が素晴らしいものになる。貪欲に幸せを求めなさい。君の周りには支えてくれる人がいることを忘れないで欲しい」

私は佐倉さんの顔を見て大きく頷いた。そして同じように彼も大きく頷くと、笑顔になり帰って行った。

片付けを啓介さんと済ませ、お茶を入れてまたリビングへ行くと彼から改まって話をされた。

「茉莉花。実は言わなければならないことがある。俺は今はAnge fleur Jusminで社長の元で勉強しているんだ。実は神戸で泊まったホテルの系列の後継者なんだ。父が佐倉社長と懇意にしていて俺を修行に出したんだ」

「え?」

「佐倉社長と京香さんのように離れ離れになりたくない。俺を信じてついてきて欲しい。俺は茉莉花を必ず幸せにする」

啓介さんは秘書ではなくホテルの後継者?
あまりのことに声が出ない。

「茉莉花はそういう肩書きにはなびかないだろう? むしろ敬遠されるのではないかと言い出せなかった。けれど俺との未来を考えてくれるって言ってくれて嬉しかった」

たしかに後継者だと聞いていたら後退りしていたかもしれない。
私は竹之内啓介さんという人を好きになった
だけのはずだったのに、まさか彼にそんな秘密があるなんて考えても見なかった。

「啓介さんは……私でいいの?」

「もちろんだ。今のままの茉莉花が好きなんだ。君といるだけで心が穏やかに、そして豊かな気持ちになるんだ。俺にも茉莉花を幸せにする権利が欲しい」

「啓介さん」

見つめ合い、絡め合う視線に私は胸の奥が熱くなってきた。

「私も啓介さんと一緒に生きていきたい。幸せにしてください。そして私と一緒に幸せになりましょう」

すると彼に抱き寄せられた。
私の心は満たされ今までの孤独感はなくなり、充足感や幸福感で胸がいっぱいになった。














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