天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
私たちは介添の人に促され、佐倉さんの腕に手をかけると歩いて会場へ向かった。
チャペルの扉の前に立ち、扉が開くのを待っている時に私は意を決して佐倉さんに声をかけた。

「この一年、本当に色々なことがありました。私は佐倉さんに出会えてよかった。母を失った悲しみを共有する存在ができて、どれだけ救われたことかわかりません。結婚するにあたってどれだけ助けられたか感謝してもしたりません」

「え?」

佐倉さんは急なことに驚いていた。
まもなく扉が開こうとしているのはわかっていたが、今どうしても言いたかった。

「あなたの子供に生まれてこれてよかったです、お父さん」

その時、扉が開いた。
ふたりで頭を下げるが、お父さんはなかなか頭を上げない。
そのうちに先ほどのハンカチをポケットから取り出すと目元を懸命に拭っていた。
ようやく踏み出した一歩だったが、前が見えているのかわからないほどに肩を震わせて泣いていた。
声を押し殺し、やっと私の手を引き前へ進むと祭壇で待つ啓介さんの元へたどり着いた。

「どうか、茉莉花をよろしくお願いします」

振り絞るような声で啓介さんに頭を下げると、その意を汲み取り、啓介さんは力強く答えた。

「私の力の限り、茉莉花を幸せにします」

それを聞き届けると私の手を彼の手に乗せ、お父さんは椅子へと着席した。

今日を区切りに私は竹之内茉莉花となる。
けれど親子のつながりは永遠だ。
家族になる啓介さんもいる。

私の人生は幸せに満ち溢れている。

END
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