天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
大輔くんと蘭子かぁ。
考えれば考えるほどにお似合いだと思える。
親友の幸せを喜びたいのは山々だけど、少しだけ取り残されたような寂しい気持ちになってしまう。
心が狭いな、と失笑した。

アパートが見えてくると昨日と同じ男性と思わしき人が私の部屋の前に立っていた。
まだ明るい昼間なので昨日よりは安心感がある。
間違いかもしれないし、と意を決して話しかけた。

「あの……」

声に反応してスマホを見ていた顔が上がった。
あれ?
どこかで会ったことがあるかも、と思うが分からない。
するとスマホをポケットにしまい、男性が近づいてきた。

「こんにちは。私はAnge fleur Jusminの竹之内と申します。林田茉莉花さんですね?」

「はい」

「よかった。お仕事がお休みの間に話ができればと思っておりました」

「はぁ……」

私は素っ頓狂な声が出てしまう。
仕事が休みの間って……私のことを調べているの?
急に背中がゾクッとなり、後退りしてしまった。
昼間とは言え、自分ひとりの時に声をかけるべきではなかったと反省するがもう遅い。
走って逃げようかと思うが足が動かない。
どうしようかと思っているうちに男性に距離を縮められた。

「あれ? 林田さんは今日Ange fleur Jusminに行かれたんですか?」

「え?」

「うちの紙袋ですよね?」

あぁ。
ハーバリウムを作った時に入れてもらった袋にロゴが入っていた。

「何かのワークショップとかでしょうか?」

私は声を出せず、こわばった表情のまま頷いた。
男性は人懐っこい表情を浮かべながらますます近づいてきた。
< 17 / 167 >

この作品をシェア

pagetop