天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
「佐倉さんの気持ちはよくわかりました。食事の時は会った瞬間の涙を見て、母をそんなに思ってくれている人がいたと思うと胸がいっぱいになりました。けれど話が進むにつれなんて、勝手な人なんだろうと思いその場にいることが不快になりました」

「正直な人なので裏はないんです。正直すぎて言わなくていいことまで話してしまう人なんです」

苦笑いを浮かべる彼の顔は秘書としても困る時があるのだろう。

「そうなんですね。私もあのメッセージを読まなければ誤解したままでした。佐倉さんへの誤解は解けましたが、母の気持ちだけはもう知ることができないのでこれ以上お話しできることはないと思います」

これが正直な感想だ。
先ほど見た写真は私の胸の中にしまっておくことにしたい。
母が私をひとりで産んだのには意味があるはずだから。
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