天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています

母の知り合い

10月になりやっと幾分暑さが和らいできたがまだまだ昼間は暑い。
久しぶりの連休で幸子さんにはああ言ったが今のところ何も予定が立てられていない。
元々インドアでおうちが大好きなので外に出られなくても苦ではない。けれどせっかくの5連休だと思うと何かしなければ、と多少の強迫観念に駆られる。今朝は普段なかなか洗えない洗濯をしたり、掃除をして過ごしたが明日は映画でも見ようかと街に出る計画を立てた。

午後になり近くのスーパーへ買い出しに出かけた。
お店からもらって帰ることが多いため自炊らしい自炊ができておらずサボり気味。せっかくの連休だから食事も頑張ろうかと思っていた。母のためにと思い、始めた栄養学の道だったがもともと食べることが好きな私には天職だったと思う。そして安治郎さんの店で働けたことも幸運だった。
スーパーで美味しそうな秋刀魚を見つけ、キノコやサツマイモなど秋の食材を買い家に戻ってみると私の部屋をちょうどノックする男性の姿が遠目に見えた。
私の部屋にそんなお客さんが来ることはない。部屋を間違えているのでは? と思い、その姿をしばらく見つめていた。そのうちに、ノックするのを諦めた思ったらドアを背に佇みはじめた。
その場をさることなく立ち尽くすその姿に恐怖を覚えた。
薄暗がりの中、背の高い男性が私の部屋のドアの前に立っている。どうしよう。
両手にさげたエコバッグを握りしめて思案してしまう。
誰かに頼りたくても仲のいい友人は幼なじみの蘭子だけ。でもこの場に女の蘭子を呼ぶのは不用心だろう。安治郎さんやふみさんも山形に行ってしまった。幸子さんに電話してみようかと思い、スマホを手にしたが迷惑をかけることになってしまうと躊躇ってしまう。優しい幸子さんなら来てくれるかもしれないが怖い思いをさせたくはない。
あの男性がいなくなるのを待とうと私は物陰に隠れしばらく動向をみるが1時間を経過した頃ようやく諦めたのか、なにかをポストに入れ帰って行った。
確実にいなくなったことを確認し、ようやく私は家に入るとすぐドアに鍵とチェーンをかけ、窓にも鍵とつっかえ棒になるようモップも立てかけた。
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