天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
「俺が思うにさ、社長は京香さんのことが忘れられなくて仕事に没頭していたんだ思う。すれ違いから離れ離れになってしまって、後悔したんだと思う。それからはいくらお見合いを勧められようが頑なに断ったと聞いてるよ」
お互い佐倉さんのマンションのある方角を見ながら話しており啓介さんの表情は見えない。
「たまたま見かけたテレビひとつで心が動かされ、ここまで辿り着いたんだ。よほど京香さんに会いたかったんだろうなって思うよ」
佐倉さんは私に会うなり涙をこぼしていた。調べる中で母が亡くなったことを知っていただろう。もし佐倉さんの言葉や啓介さんから聞く話が本当なら、どれだけ母のことを想い死を悼んだのだろう。
無言の私に啓介さんは肩を抱き寄せてきた。
「茉莉花ちゃんもひとりで頑張ってきたのは知ってる。俺が君やお母さんを調べる手伝いをしたんだからさ。でも社長がどれだけ京香さんに会いたかったのかも1番近くで見ていたんだ」
コクンと頷いた。
あの日佐倉さんに言われたことは言い訳がましく聞こえ母を邪険にしたように聞こえた。けど彼の涙に嘘はなかったと思えた。
本当に母のことを思ってくれていたのだと今になりようやく落ち着いて考えられるようになった。
啓介さんの言うように母のことが今でも好きなのだとしたら、と胸の奥が痛む。
「またいつか社長と京香さんの話をして欲しいなと思う。これは普段から社長を見ている人間としてのお願い。秘書ではなくひとりの人としてだ。急がなくていい。でも社長があなたのことを気にかけてるって知っていて欲しい」
「気にかけてる?」
彼は正面を向いたまま頷いた。
「社長は茉莉花ちゃんの存在を知ってからずっと見守ってきたんだ。初めて会ったあの日、話が上手にできず反省していたよ。けどまた茉莉花ちゃんに不快な思いをさせるのが不安でさ。遠くから見てるよ」
「遠くから?」
「あぁ。初めは安治郎で働く姿を見ていたよ。くるくる働く姿を見て感心してたよ。あの話の後からもアパートに一人暮らしが心配みたいで社長は帰りにいつも通っていたよ」
「帰り道ではないですよね?」
啓介さんは頷いた。
お互い佐倉さんのマンションのある方角を見ながら話しており啓介さんの表情は見えない。
「たまたま見かけたテレビひとつで心が動かされ、ここまで辿り着いたんだ。よほど京香さんに会いたかったんだろうなって思うよ」
佐倉さんは私に会うなり涙をこぼしていた。調べる中で母が亡くなったことを知っていただろう。もし佐倉さんの言葉や啓介さんから聞く話が本当なら、どれだけ母のことを想い死を悼んだのだろう。
無言の私に啓介さんは肩を抱き寄せてきた。
「茉莉花ちゃんもひとりで頑張ってきたのは知ってる。俺が君やお母さんを調べる手伝いをしたんだからさ。でも社長がどれだけ京香さんに会いたかったのかも1番近くで見ていたんだ」
コクンと頷いた。
あの日佐倉さんに言われたことは言い訳がましく聞こえ母を邪険にしたように聞こえた。けど彼の涙に嘘はなかったと思えた。
本当に母のことを思ってくれていたのだと今になりようやく落ち着いて考えられるようになった。
啓介さんの言うように母のことが今でも好きなのだとしたら、と胸の奥が痛む。
「またいつか社長と京香さんの話をして欲しいなと思う。これは普段から社長を見ている人間としてのお願い。秘書ではなくひとりの人としてだ。急がなくていい。でも社長があなたのことを気にかけてるって知っていて欲しい」
「気にかけてる?」
彼は正面を向いたまま頷いた。
「社長は茉莉花ちゃんの存在を知ってからずっと見守ってきたんだ。初めて会ったあの日、話が上手にできず反省していたよ。けどまた茉莉花ちゃんに不快な思いをさせるのが不安でさ。遠くから見てるよ」
「遠くから?」
「あぁ。初めは安治郎で働く姿を見ていたよ。くるくる働く姿を見て感心してたよ。あの話の後からもアパートに一人暮らしが心配みたいで社長は帰りにいつも通っていたよ」
「帰り道ではないですよね?」
啓介さんは頷いた。