天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
【今オーストラリアに着いたよ。こっちは初夏だから少し汗ばむくらいだ。社長と色々なフラワーフェスティバルを見て回るつもり。茉莉花ちゃんも仕事頑張って】

【素敵ですね。日本とは花も違うんでしょうね。急に気候が変わると大変ですね。頑張ってくださいね】

私はスマホを見て笑顔が溢れてしまった。
やりとりはなんてこともない内容だが、啓介さんがくれたというだけで嬉しくなる。
時差もあるし、仕事で行っているのに合間で私に連絡をくれる彼の優しさで胸が温かくなる。

こうして毎日朝や晩に他愛のないメッセージのやり取りを続けた。
今日食べたものや見たものの話、感じたことや思ったことを素直な気持ちで伝えることができた。
啓介さんが私の心の中にすっと入ってきた。
心の垣根を優しく外し、私を素直にさせてくれた。

【明日帰国する】

そのメッセージを見て胸が高鳴った。
会おうと言われたわけでもないのに、胸の奥が温かくなり、ぎゅっと締め付けられた。

【お疲れ様でした。気をつけて帰ってきてくださいね】

その言葉を返すだけでも喉の奥が詰まるよう。

【明後日の土曜日は予定があるかな?】

すぐに返信が返ってきた。
返信を読むと緊張で手に汗をかいてしまう。

【はい】

【良かった。お土産があるんだ。渡してもいい? 帰国したらまた連絡する】

会う約束ができ、明後日のことを考えるだけで心が弾みだした。
仕事に向かう足取りも急に軽くなった。
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