天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
「茉莉花ちゃん、なんだか今日はいつもと違うわね」

鋭いふみさんが昼休みに声をかけてきた。幸子さんもうんうん、と頷き話に参加してきた。

「何かいいことあった?」

ふたりが椅子を持ち正面に回り込んできた。
何があったのか興味津々な顔で私が口を開くのを待っている。

「あ……えっと」

「うんうん」

ふたりが身を乗り出してくる。

「竹之内さんが明日海外出張から帰国するみたいでお土産を買ってきてくれたんです」

「いいわ〜! 竹之内さん凄くいい。わざわざ仕事の出張なのにお土産を買ってきてくれるなんて脈アリじゃない」

キャー、とふたりは勝手な妄想が頭をよぎっているみたい。

「そんなことないですよ。母の知り合いだから私にも気を配ってくれているんです」

俯きながら小さな声で説明した。

「そんなことないわよ。仕事で行っているのにお土産を買うってことは茉莉花ちゃんのことを思ってくれて、何がいいかなって考えてくれたってことじゃない」

そうなのかな。
私のことを考えて買ってきてくれてるってことかな。

「そうよねー。ただの知り合いじゃ出張土産なんて買わないわよね。何くれるのかしらね」

ふたりの期待が大きくなるに連れ私は不安になってきた。
期待させておいて、それに反してみんなと同じようなものだったら何て言おう。
俯いたまま顔を上げられずにいるとふみさんに肩を叩かれた。

「きっと良いものよ。彼を信じなさいね」

それだけいい片付けに戻っていった。
幸子さんも笑いながら椅子を片付け、手伝いに行ってしまった。
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