天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
ようやく少し落ち着き、泣きすぎたのかしゃっくりが出始めた頃、佐倉さんは優しく声をかけられた。

「大丈夫?」

「はい。お互い泣きすぎましたね」

私が苦笑いをしながら彼の顔を覗き込むと目を真っ赤に腫らしていた。

「ハハハ。今まで生きてきた中で1番泣いたな。悲しいし、嬉しいし、何て表現したらいいのか分からないよ」

私は頷くと何とか立ち上がり、冷めてしまったお茶を持ってきた。
仏壇の前のテーブルでふたり、冷めたお茶をごくごくと飲み干した。

「実はね、茉莉花って名前を聞いたときにもしかしたらとは思っていたんだ。私も京香さんも好きな花だったからね。黄色くていい香りのする花なんだ」

「2人の好きな花だと聞きました。あと……母の友人の美知おばちゃんに聞いたのですが、佐倉さんのご両親が母の元を訪ねてきたようです」

「え?」

「交際を反対していたようです。美知おばちゃんに聞いた話だと幼なじみの人がご両親に有る事無い事を話し、それを信じて別れるよう言われたそうです」

口に手を当て、心なしか顔が青ざめている。

「忙しい佐倉さんと連絡が取れなくなったこともあり、母はご両親の意見だけでなく佐倉さんの納得の上で別れる話をしてきているんだと思っていたようです」

「まさかそんなことが」

私は頷いた。
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