天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
「もちろんおばちゃんからの話なのでそれが全てかは分かりません。けれどそういうことがあったのは事実のようです」
「確かにあの頃幼なじみから京香さんに関して悪口のようなことを言われてた。けれど真に受けることもないと聞き流していたんだ。それが悪かったのか……まさか両親に吹き込むなんて思っても見なかった」
あまりのことに呆然とした表情を浮かべていた。
「それが理由かは分かりませんが、結果として佐倉さんと別れたことが全てです」
「私と別れる決意をしたけれど、彼女は君を産み育ててくれたことが全てだ」
私が産まれたことを決して否定せず、母を貶めることもなく、私に言われたことを全て受け入れてくれた。
「この写真を見つけたのはつい最近なんです。母は何の手がかりも残してくれず、話してもくれないまま他界してしまったので私は天涯孤独なのだと思っていました。佐倉さんに先日会い、ふと母の遺品を整理していたらこの写真が出てきたんです。正直驚きました」
彼は大きく頷いた。
「このことを話すべきか、私の心の中だけにとどめておくべきか悩みました。今日佐倉さんがここに来なければずっと悩んでいたと思います」
「何かに導かれたのかな。私は出張に行っていても茉莉花ちゃんが気になって仕方なかった。目新しいものを見れば気に入ってくれるかな、とつい手に取っていたよ。それを渡せるかも分からないのに」
少しおどけるような言い方をしながら照れ隠しのような表情を浮かべていた。
「けれど帰国して思ったんだ。言わなければ伝わらないし、タイミングを逃せば次のチャンスはいつくるか分からない。これ以上後悔をしてはいけないと思った」
「佐倉さん……」
「俺は京香さんのことが好きだったし、ほんとうに将来を考えていた。今こうして君を目の前にして、私の子供だと疑う余地はこれっぽっちない。間違いなく私の子供だと断言できる」
力強い言葉に胸が張り裂けそう。
「もちろん茉莉花ちゃんが受け入れたくなければ身近なおじさんと思ってくれ。せめてそばにいるのだけは拒絶しないで欲しい」
「はい」
「困ったことは相談してきて欲しい。天涯孤独だなんて言わないで頼って欲しい。私は君のことを決して裏切らない。もう後悔はしたくないんだ」
真剣な表情で私を顔を見つめる佐倉さんの目は力強さを感じた。
私は素直に頷いた。
すぐに父親だと思えるかと問われれば否だ。母の苦労してきた姿も思い出される。私たちはふたりで肩を寄せ合い生きてきた。それを今さら父親の顔をされてもどうしたらいいかわからない。
ただ、母の好きだった人がどんな人だったのか分かってよかったと思った。
「確かにあの頃幼なじみから京香さんに関して悪口のようなことを言われてた。けれど真に受けることもないと聞き流していたんだ。それが悪かったのか……まさか両親に吹き込むなんて思っても見なかった」
あまりのことに呆然とした表情を浮かべていた。
「それが理由かは分かりませんが、結果として佐倉さんと別れたことが全てです」
「私と別れる決意をしたけれど、彼女は君を産み育ててくれたことが全てだ」
私が産まれたことを決して否定せず、母を貶めることもなく、私に言われたことを全て受け入れてくれた。
「この写真を見つけたのはつい最近なんです。母は何の手がかりも残してくれず、話してもくれないまま他界してしまったので私は天涯孤独なのだと思っていました。佐倉さんに先日会い、ふと母の遺品を整理していたらこの写真が出てきたんです。正直驚きました」
彼は大きく頷いた。
「このことを話すべきか、私の心の中だけにとどめておくべきか悩みました。今日佐倉さんがここに来なければずっと悩んでいたと思います」
「何かに導かれたのかな。私は出張に行っていても茉莉花ちゃんが気になって仕方なかった。目新しいものを見れば気に入ってくれるかな、とつい手に取っていたよ。それを渡せるかも分からないのに」
少しおどけるような言い方をしながら照れ隠しのような表情を浮かべていた。
「けれど帰国して思ったんだ。言わなければ伝わらないし、タイミングを逃せば次のチャンスはいつくるか分からない。これ以上後悔をしてはいけないと思った」
「佐倉さん……」
「俺は京香さんのことが好きだったし、ほんとうに将来を考えていた。今こうして君を目の前にして、私の子供だと疑う余地はこれっぽっちない。間違いなく私の子供だと断言できる」
力強い言葉に胸が張り裂けそう。
「もちろん茉莉花ちゃんが受け入れたくなければ身近なおじさんと思ってくれ。せめてそばにいるのだけは拒絶しないで欲しい」
「はい」
「困ったことは相談してきて欲しい。天涯孤独だなんて言わないで頼って欲しい。私は君のことを決して裏切らない。もう後悔はしたくないんだ」
真剣な表情で私を顔を見つめる佐倉さんの目は力強さを感じた。
私は素直に頷いた。
すぐに父親だと思えるかと問われれば否だ。母の苦労してきた姿も思い出される。私たちはふたりで肩を寄せ合い生きてきた。それを今さら父親の顔をされてもどうしたらいいかわからない。
ただ、母の好きだった人がどんな人だったのか分かってよかったと思った。