天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
佐倉さんは仏壇に手を合わせ、小さな声で何度も「京ちゃん」と呼びかけていた。

私には名刺を渡し、その裏にプライベートな番号とアドレスを教えてくれた。

「竹之内経由でしか連絡が取れないことが悔しかったんだ。やっと渡せた」

苦笑いしながら手渡してきた。

「後でメッセージを送りますね」

大きく頷くとやっと笑顔になり、また会おうと約束を交わして帰っていった。

私は仏壇の前に座り込むと母の遺影を見て、笑っている気がした。

ふと佐倉さんの持ってきたお土産の紙袋が目につき開いてみた。すると中には本当にに色々な物が入っていた。
オーガニックコスメやお菓子、トートバッグや雑貨など彼の言うように勧められたものや目に入ったものはみんな買ったのだろう。その姿を想像しただけで表情が緩んだ。
名刺を手に取ると佐倉さんのアドレスをスマホに登録し、初めてのメッセージを送った。

【お土産を見ました。本当にたくさんの物をありがとうございました。大切に使わせていただきます。茉莉花】

するとすぐに既読となり、返信が返ってきた。

【本当に今日会いに行って良かった。タイミングというのがあるんだなとつくづく思い知ったよ。ありがとう。近いうちにまた会おう】

メッセージを見て頷くと私は机の上に置いた。
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