天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています

彼の隣に

翌朝目が覚めると胸のつかえが取れ、すっきりしていた。
昨日泣きすぎたのか目が腫れぼったくて可笑しくなった。
啓介さんに会うのに、と焦って顔を洗い目元をクーリングした。
何を着ようかと悩んでしまうが先日の展覧会とは違い啓介さんも私服で来るだろう。私もいつも通り、とは言え少し可愛らしい感じにまとめた。少ない服の中から、少しでも可愛く思って欲しいと思いながら選ぶのはどこかくすぐったいような気持ちだった。

11時半くらいになると私はソワソワとし始め、50分になると外で待とうと玄関の鍵をかけた。
道路で待とうと歩き始めるとネイビーのRV車が止まっているのが目に入った。
中から人が出てきたと思ったら啓介さんだった。

「茉莉花ちゃん、久しぶり。さぁ、どうぞ」

助手席に回ってきてくれドアを開けてくれた。

「ありがとうございます」

私は車に乗り込むと彼も運転席に回り込み、エンジンをかけた。

「疲れているのに迎えにきてもらってすみません」

「全然大丈夫。さ、シートベルトをして」

私がシートベルトをしたのを見ると彼は車を発進させた。
彼はオーストラリアでの話をしてくれ、会話が途切れることなくあっという間に吉祥寺に着いた気がした。

「何が食べたい？」

「うーん。何がいいかな。でも啓介さんは久しぶりに日本食がいいんじゃないですか？」

彼は笑いながら頷いていた。

「海外でも日本食は食べられるんだけどやっぱりどこか違うんだよな。それに現地の食べ物も食べたくなるから帰ってくると日本食が食べたくなるんだよね。今日は俺に合わせてもいい？」

「もちろんです」

車をパーキングに止めると彼は歩き出した。
路地を入ったところにある蕎麦屋の前までくると「ここでいい？」と確認をされ、頷くと暖簾をくぐった。
土曜日のお昼とは言えそこまで混んでおらず、しかも中は半個室のように区切られておりプライベートな感じになっていた。
ふたりとも天ざるを頼むと彼は紙袋を渡してきた。
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