天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
「この後まだいいかな?」

食事が終わると啓介さんから公園に行かないかと誘われた。
今日はわりと暖かいし、近くにある井の頭公園に行ってみないか、と言われ私はもちろん頷いた。そこで佐倉さんの話が出来たら、と思った。
15分ほど歩くと公園に着いた。
そのまま2人で並んで池の周りを話しながら歩いた。
啓介さんはいつも話題豊富で話し上手。けれど一方的でなく、私の話も聞いてくれる。

「結構歩いたね。あそこで座らない?」

ベンチを指差していた。
2人でベンチに腰掛けると私はさっきの話の続きを持ち出した。

「昨日佐倉さんが来たと言ったでしょ。その時に色々と話しました。結果として佐倉さんが父である可能性をふたりで確認しました」

「えぇ? どういうこと?」

「実は母の遺品から写真が出てきたんです。ふたりが映っており、その裏に『茉莉花をありがとう』と書かれていました。母の友人から聞いた話や佐倉さんに聞いた話を重ね合わせると結論としてはそうなるのではないかと」

とても驚いた様子で横に座っていたが私の方を向き、身を乗り出してきた。

「けれどすぐには父だと思えないし、佐倉さんも知り合いと思ってくれて構わないと言ってくれました。まずは佐倉さんを知っていきたいと思っています」

「そうか。良かったよ。社長は報われたってことかな。茉莉花ちゃんにとっても心強い味方が出来て良かったね」

「はい」

確かにとても心強い味方が出来たと思う。私は周りの人に恵まれていると思っている。けれどどこかで他人だと思い遠慮してしまう気持ちがある。そんな中、佐倉さんは絶対に裏切らないと言ってくれた。この言葉は私の中で絶対的な信頼につながった。

「それじゃあ、ますます悔しくなったよ」

啓介さんの言っている意味がわからない。私はキョトンとしてしまうと啓介さんは頭をかきながら苦笑いしていた。
< 94 / 167 >

この作品をシェア

pagetop