天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
ポケットの中から小さなアクセサリーケースを取り出していた。

「お土産のメインはこれなんだ。俺は茉莉花ちゃんのことが好きだ。君といるととても楽しいし、心が穏やかになる。いつも一緒にいたいし、理由がなくても会いたい。付き合ってもらえないか?」

まさか啓介さんに付き合って欲しいと言われるとは想像もつかなかった。
私の中で彼の存在はとても大きなものになっており、彼に抱く感情は今まで経験したことのないものだった。
一緒にいたいけど、そばにいると胸が苦しくなる。彼からメッセージが届くたびに胸が高鳴るし、跳び上がりたいほど嬉しくなる。彼と会うたび次はいつ会えるのだろうと期待したくなる。
こんな複雑な気持ちを処理しきれずにいたが、彼も同じ気持ちなのだろうか。
私は正直に今の気持ちを伝えた。

「啓介さんといると楽しいしドキドキする。
でも私でいいのかと不安になる」

「いいに決まってるだろう。社長よりも先に俺が支えるって伝えたかった」

「うん。でも啓介さんといるだけで温かい気持ちになれるよ。それは佐倉さんとはちょっと違うと思う」

急に頭を撫でられた。

「それはそうだよ。恋愛の好きと一緒なはずない。それで俺は付き合ってもらえるのかな?」

「はい。よろしくお願いします」

私が頭を下げるとその頭を抱き寄せられた。

「こちらこそよろしくね」

耳元で聞こえる彼の声にドキドキする。
男の人に抱きしめられるのだって初めて。どうしたらいいのかわからない。

「茉莉花って呼んでいい?」

「も、もちろんです」

「俺のことも啓介でいいよ」

私は彼の腕の中でフルフルと頭を振った。

「よ、呼び捨てなんて私にはハードルが高いです」

「じゃあそのうちね」

そう言うと彼はそっと離れた。
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