【完結】エレベーターに閉じ込められたら、恋に落ちました。
橋本さんとはあまり話したことはないが、挨拶は交わすくらいの、そんな仲でしかない。
私のことを気にかけてくれる人が、橋本さんだったということを、私はこの時に初めて知るのであった。
「……時枝さん」
「へ? あ、はい……?」
きゅ、急に話しかけられた……?
「今日は、少し寒いですね」
「え?……あ、そう、ですね」
なぜ話しかけられたのか、未だに謎だ。今まで話しことないのに、なぜ話しかけられたのだろうか?
「掃除の時で構いませんので、ついでに試作室の暖房を付けておいていただけますか?」
「あ、はい。 分かりました」
なんだ、ただのお願いごとだったのか……。びっくりした。
「よろしくお願いします」
「はい」
橋本さんって、クールだからか、何を考えてるのか分からない人だな。 突然話しかけられたから、びっくりしたし……。
「……それから」
「え?」
「身体に気をつけてくださいね、急に寒くなりましたから」
え……何? もしかして、私のこと心配してくれてるの?
……なぜ、だろうか?
「ありがとう、ございます」
エレベーターはあっという間に、五階へと到着する。