年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
「さっちゃん、お風呂入れとくから先入ってね」
「睦月さんのほうこそ、私より動いてるから汗かいてるでしょ? 先に入ったら?」

 洗面所で手を洗いながらそう言うと、睦月さんはニッコリ笑って私に言う。

「じゃあ、一緒に入る?」

 ……。そうくると思った。私があまりにも恥ずかしがるから、今まで数えるほどしか一緒に入ったことはない。普段はそれを尊重してくれるのだけど、時々ご褒美的におねだりされてしまう。一緒に入ろうと。

「ピ、ピザ受け取らなきゃいけないし、また今度……」
「え~。今日俺頑張ったから労って欲しかったなぁ」

 時々見せる、ちょっと意地悪な顔でそう言うと私の顔を覗き込む。

「あっ、ほら! 明日も頑張ってもらわなきゃいけないし」

 視線を泳がせながらそう答えると、睦月さんはニヤリと笑う。

「じゃあ、新居の広いお風呂を一緒に堪能しようね? 楽しみだなぁ」
「……。堪能するのはお風呂だけにしてね……」

 私が尻込みしながらそう言うと、睦月さんは息を漏らして笑う。

「ごめん。それはきっと無理。今から謝っとくよ」

 そう言って睦月さんは私の唇を塞いでいた。
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