年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 なんとなく伸ばし始めた髪は、ようやく肩につくくらいになってきた。元々が細くて量も多くないから、少し鬱陶しくなってきたな、とは思いつつ普段は耳にかけるくらいで、特に結んだりしていない。でも今日はさすがに邪魔だなぁと、持っていた細いゴムで無理矢理纏めてピンで止めていたのだ。

 慌てて首を隠すように手をやると、香緒ちゃんは「僕しか見てないから大丈夫だよ」なんて笑っている。確かに、この髪型にしたのはここで掃除を始めてからだけど、そう言う問題ではない。

「香緒ちゃん! 気づいてたなら早く言ってよ!」
「ごめんごめん。さすがに言い出せなくて」

 決まりの悪い顔した私と盛大に笑う香緒ちゃんが戯れあっていると、玄関が開く。

「さっちゃ~ん! 香緒~! もうそろそろ出発するよ~! って、どうしたの?」

 睦月さんが私たちの様子を見て不思議そうに尋ねる。

「な、なんでもないよ!」

 慌てて答える私の後ろに香緒ちゃんは回ると、「さっちゃん、後ろ取ってあげる」と髪に触れた。ピンを取ってくれる香緒ちゃんにされるがままでいると、後ろから香緒ちゃんの「ふふっ」笑う声がした。
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