年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
「なんかいつもと反対だから新鮮」

 そう言いながらゴムを外して、香緒ちゃんは手櫛で髪を整えてくれた。

「ありがと。香緒ちゃん」

 振り返って言うと、香緒ちゃんは「どういたしまして」と微笑んだ。

「睦月君、お待たせ。ってどうかした?」

 香緒ちゃんと2人で玄関先に立ちっぱなしだった睦月さんの元へ向かうと、じっと私たちを見ていた睦月さんに香緒ちゃんがそう尋ねた。

「いや、なんか猫と栗鼠が戯れてるっぽいなぁって」

 睦月さんはしみじみとそんなことを言う。そう言えば、一番最初に私のこと小動物なんて言ってたな、なんて思い出す。

「そう言う睦月君はさ、見た目草食動物なのに、中身は肉食獣だったんだね。少しは栗鼠さんに気を配ってね?」

 意味深にニッコリと微笑む香緒ちゃんに対して、睦月さんは面食らったような顔をしている。

「えーと。何の話、かな?」

 さすがにすぐに何のことを指してるなんてわからないみたいだ。

「かっ、香緒ちゃんっ!」

 慌てて止めようと思ったけど、香緒ちゃんのほうが先に口を開く。

「栗鼠さんに噛み跡つけるのも、時と場合を考えたほうがいいよってこと」

 そこまで言われたら睦月さんも察したようで、バツの悪そうな顔を見せて「香緒……。見たな?」なんて言っていた。
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