年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 睦月さんが武琉君をトラックに乗せて先を走ることになり、希海さんは自分の車で、香緒ちゃんも私を乗せて自分の車でそれに続いた。マンションの駐車場は、引っ越し用のトラックを置くスペースはあるけど来客用は空きが無く、近くのパーキングに停めに行った。

「へー。思ってた以上に立派なマンションだ」

 道を歩きながら建物を見上げて香緒ちゃんはそう言う。15階建てで、1フロアあたりの戸数はそう多くない。どちらかと言えばこじんまりしているほうだと思うけど、そのぶん落ち着いた感じはする。

「そうか?」

 素っ気なくそう返す希海さんに、香緒ちゃんは続ける。

「希海、自分の持ち物なのに冷めてるなぁ」

 笑いながらそう言う香緒ちゃんの台詞に、私は思わず「へっ?」と声を上げる。

「ここ、希海さんのものなんですか⁈」

 ご実家が資産家なのは知ってたけど、なんかスケールの違うことを聞かされて、私は驚きながらそう口にする。

「さすがに全部じゃない。何戸か所有している物件を賃貸に出してるだけだ」
「え、じゃあ、うちも?」
「あぁ……」

 私は絶句しながら希海さんを見上げていた。なんか私、凄い人に引っ越し手伝わせてたんだ、なんて思ってしまった。
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