年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
「暁さんの息子なんだから、お前もいいヤツなんだろう。まぁ、いくら暁さんの息子でも、お前と兄弟になるつもりはねえけど」

 そう言って、学さんは笑っている。

「え……っと……」

 ポカンとしていると、学さんは笑顔のままこちらを向いた。

「お前とは、親子になるんだろうが。まさかこんな年の近ぇ息子ができるなんて思いもしなかったが、咲月の選んだヤツだ。娘を頼むぞ……。睦月」

 そう言った学さんは、懐の大きな父親の顔をしている。さっちゃんが大好きで、尊敬している父親そのものだった。

「ありがとうございます。さっちゃんを、一生大事にします。……お父さん」

 込み上げてくるものを堪えながらそう言うと、学さんは「お前にお父さんとか呼ばれたくねぇよ! 学でいい」と照れ隠しのように顔を顰めていた。

「わかってますって。じゃあ、学さん。帰りましょうか」
「おう! 美紀子のメシが無くなっちまう。祖母ちゃん直伝だからな。旨いぞ?」
「さっちゃんのご飯も、美紀子さん直伝だから世界一美味いですよ?」

 そんなことを返しながら俺は車のエンジンをかける。
 開け放った窓からは、爽やかな春の風が吹き抜けていた。
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