年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
「良かったわね。さっちゃん」
「咲月、睦月さん、おめでとう!」

 そんなお祝いの言葉を受け取りながら俺はさっちゃんを座るように促した。

「泣くことないだろう。お前は笑顔が一番似合うんだから、笑ってろ」

 さっちゃんはそう言われると、鼻を啜りながら真っ直ぐに顔を向ける。

「うん。お父さん、お母さん、あり……」

 そこまで言ったところで、学さんに「そんなセリフは結婚式にしてくれ。こっちが泣いちまうだろうが」と遮られる。

「わかった。絶対にお父さんを泣かせてみせるからね!」

 ようやくさっちゃんらしい笑顔を見せて、学さんにそう言った。

「じゃあ、みんな。いっぱい食べて飲んでいってね。真琴君はあとでお買い物行くからアルコールはなしね?」

 美紀子さんがニコニコしながら立ち上がる。

「えー! なんで俺だけ……」

 不満そうにいう真琴君の肩に、健太君がポンと手を置く。

「安心しろ。俺も明日香送るからノンアルだ。明日香は吐かない程度に飲めよ?」

 戯けたように言う健太君に、明日香ちゃんが「私のほうがお酒強いんだからね! 見てなさい!」と勢いよく返していた。

 そんなやりとりに皆笑いながら、宴会が始まった。
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