年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
「学さん。お酒強いね」
「暁さんも結構飲んでたよ?」

 そんなことを言いながら、2人で手を繋いで住宅街を歩く。さっちゃんの実家に着いたのはお昼過ぎ。そして今はもう夕方で、陽はかなり傾いている。

 お酒もソフトドリンクもそれなりに無くなり、さっちゃんが酔い覚ましにコンビニに行くと言うから、もちろん一緒に外に出た。

 入り組んだ住宅街の細い路地を歩きながら、さっちゃんと取り留めもない話をする。

「あ、そこが健太のうち。もうちょっと行くと奈々美ちゃんのうちがあるの」
「本当にご近所さんだ。さっちゃんを小さい頃から知ってるって、ちょっと羨ましいかも」

 そう言って笑いかけると、「私も、睦月さんを昔から知ってる香緒ちゃん達が羨ましいな」と笑いながら返されてしまう。

「お互い様だね。でも、これから先の未来のさっちゃんを俺が一番知ってるんだと思うと嬉しいよ」

 そう言って引き寄せると、さっちゃんは自分から俺の背中に手を回して、ギュッと胸に収まった。道端だけど、歩行者しか通れそうにない細い路地。と言うか、さっきから全く人と会ってない。

「全然人いないけど、いっつもこんな感じ?」
「うん。この辺りの人って、すぐ車に乗ろうとするの。さっきも真琴が車出そっかって言ってたでしょ? 歩いて10分ほどの距離なのにね」

 笑いながら、さっちゃんは俺を見上げていた。
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