【短】虚弱なウサギと乱暴なトラ
冷たくしないで
「あの、せんせぇ……それじゃあ、失礼します……」
「……あぁ」
恐る恐る挨拶をすると、せんせぇは振り返りもせずに、素っ気なく答える。
カラカラと静かに扉を閉め、しん、とした廊下に出たわたしは、気づけば二の腕を擦っていた。
もう、熱は下がったはずなのに……寒い。
「せん、せぇ……」
ツン、と涙が込み上げてきて、目を瞑る。
どうして、なのかな……。
何が、悪かったんだろう……?
そんなことは、もう何回も考えたのに。
あの日からずっと、せんせぇは冷たいままだ。
一度は謝ったけど……、「兎澤が謝る必要はない」って、もう、ウサギとも呼んでくれなかった。