【短】虚弱なウサギと乱暴なトラ
「あの……保健室、入りたいんだけど……」
「っ!? ご、ごめんなさいっ!」
いつの間にか他の人が来ていて、わたしは慌てて保健室の前から走り去る。
ガラッ
「トラ先生――」
「おう、どうした?」
廊下が静かだから、後ろからせんせぇの声が聞こえてきて、胸が苦しくなった。
わたしにも、少しぶっきらぼうだけど温かいその声で、話しかけて欲しい。
保健室の扉を開けたら、“またお前か”って呆れて、ちょっと怖くてもいいから、“何回も言ってるだろ”って、怒って欲しい。
いつものせんせぇに会いたい。
いつものせんせぇとお話したい。
せんせぇに冷たくされるのは――……もう、嫌だ。