親友を泣かした私は。
謝りたかった
小学1年生のときに席替えで隣の席になったあいつ――。白雪美波。
俺は気の弱いやつが嫌いだ。授業中先生に当てられるとおどおどして顔が茹でダコのように赤くなったり、昼休みの時に並んでいたブランコを横入りされても何も文句を言わなかったり、すべての行動が俺をイライラさせた。なんだよ。ちゃんと嫌なら嫌って言えよな。ほんと、あんなやつ見てるとイラつく。
そんなことを思っている俺があいつに恋をするとは思わなかった。
俺はすぐに思ったことを言ってしまうようなやつだからクラスメイトから嫌われていた。
ある日の授業。
学校の畑に自分たちが育てた野菜を観察するという授業があった。授業も無事終わり教室に帰ろうとするとクラスメイト何人かに呼び止められた。相手の顔を見ると昨日ケンカでボコボコにしたやつだった。名前は忘れた。そいつに体を押されて、思いっきり畑に転んでしまった。1体1でケンカして勝てないからって数人で1人をいじめるのは卑怯だろ。
そんなことを考えていると、突き飛ばしたやつが俺のほうを見てこわばった表情をしていた。相手の視線の方を見ると学校で育てている野菜の茎が折れてしまったのだ。先生に怒られるのが嫌だったのかすぐに教室の方に走っていった。弱いやつ。
俺はすぐにその場に立った。よごれた服を見て思う。せっかくお母さんが買ってきてくれたのにな。足は少し怪我をしていた。もちろん先生は今、俺があいつにやられたことを知らない。職員室に用事があるとかで先に校舎の方に入ってしまったのだ。クラスメイトも何人か畑にのこっていたけれど泥だらけで怪我をしている俺をみんな見て見ぬふりだった。
嫌われている俺に対する態度がそんな感じなのもしかたないと思った。
そんな中、気の弱くて嫌いだったあいつ。
美波は俺の方に駆け寄ってきた。そして泥だらけの服をハンカチでふいてくれたのだ。そして怪我した足に絆創膏を貼ってくれた。あいつは
「痛いの痛いの飛んでけ~!」
とバカみたいに言った。その時の笑顔は今でも忘れない。太陽のように光輝いていた。
俺はこの笑顔で恋に落ちた。この笑顔をずっと守っていこうと決めた。
それから俺は今まで思ったことをすぐ口にしていたが、心を入れ替えて友達に優しくした。そうしたら徐々にクラスに馴染み楽しい学校生活をおくることができた。
小学4年生になった俺は今でも同じクラスの美波が好きだった。そんな俺が学校から帰っていると、前の方に美波と違うクラスの音瀬が歩いていた。二人の会話を俺は盗み聞きしていた。
衝撃の事実が明らかになった。美波は佐藤ひろが好きらしい。頭が真っ白になった。ひろは良い奴だ。俺がクラスメイトから嫌われていた時期によく話しかけてくれた。ひろがいたから学校に行きたいと思った日もよくあった。
だからこそ嫌だった。俺はひろには勝てない。
怒りと悲しみで美波に言ってしまった。
「ひろが好きなんだ。みんなに言っちゃおう。」
俺はみんなに言うつもりは一切なかった。彼女が傷つく姿なんて見たくないから。けど美波は悲しそうにこちらを見ていた。そんな顔で見るなよ。俺の心は今にでも崩れそうだった。俺は目から涙がこぼれないように家まで走った。
運が悪く次の日からインフルエンザにかかってしまい、一週間学校を休まなければならなかった。本当は美波に昨日のことを謝りたかったのに。
一週間後学校に行くと教室の空気がどんよりしていた。美波の席にマイネームペンで悪口がたくさん書かれていた。俺は頭に血がのぼった。
友達に俺が休んでいる間に何があったのかを聞いた。
黒板に美波がひろを好きだということと、ひろに近づく女子は消えろと書かれていたこと。そこから無視されたり、物を捨てられたり、机に悪口が書かれたり。聞いているだけで吐き気がした。
美波は一週間ひとりで苦しみに耐えていたのだ。あの笑顔をまた見たい。俺はこのいじめを無くしてみせる、そう心に決めたのだ。
次の日から俺は学校に早く行った。美波よりも早く学校に行きたかった。悪口を書いている犯人をみつけることと、悪口の書かれた机を綺麗にすることが目的だ。朝一番で学校に行くとすでに机には悪口が書かれていた。きっと昨日の放課後に書いたんだろうと思った。美波が来る前に机を綺麗にした。これからは毎日早く来て机を綺麗にしようと決めた。これぐらいしか美波を救うことができないと思った。
美波が学校に来た。美波は自分の机を見ると安心したのか頬が緩んだ。それを見ていたクラスメイトは面白くないのか美波のいない所で陰口を言った。その会話で最初に黒板にあんなことを書いたのはひろのファンクラブに入っている女王的存在のグループだったらしい。
放課後、美波が帰ったあとに美波をいじめているヤツらを教室に呼んだ。俺はいじめているヤツらに向かって頭をさげたて言った。
「もう美波をいじめないでください。お願いします。」
俺は考えた。もしここで俺がいじめているやつらを殴ったり蹴ったりすることもできる。けどそんなことをしてしまったら美波がもっと酷い目にあってしまう可能性があるからやめた。
いじめをしていたグループのひとりが
「もうあいついじめるのやめる。なんか最近つまらないもん。あいつ全然泣かないし。」
俺は今にでもこいつの顔面を殴りたかったがその気持ちをぐっとこらえて
「あいつのこと次いじめたらどうなるかわかるよな」
と一言ぶつけて教室を出ていった。
もう一度美波としっかり話したかった。美波に謝りたかった。しかし美波は俺を見る度に怖がって目をそらしてしまう。音瀬も俺と目があうと睨まれてしまう。きっと俺にあんなことを言われた次の日に黒板に書かれたからいじめの元凶は俺だと思っているんだな。だから俺はもう美波に近づくことをやめた。
美波はいじめが無くなって前よりずっと笑顔が増えた。だから俺は美波の笑顔を遠くから見守ることにした。
俺の初恋はもうここで終了だと思った。
中学2年生になって同じクラスの美波を見た時俺は思った。また美波と話したい。
謝りたい。
本当は小学生の時に諦めはついていなかったのだ。
自己紹介の時に緊張で噛んでしまった時の顔。小学生の時の頃と変わらず茹でダコみたいに真っ赤で可愛かった。
委員会決めのときくじ引きで俺と美波が一緒に学級委員になったとき。初めて神様っているんだなって思った。めっちゃ嬉しかった。
鎌倉の班決めのとき、どうしても美波と同じ班になりたかった。このことを同じ班の青木竜二と明智健人に美波との過去を話した。そしたら2人が協力してくれて同じ班になる事ができた。
鎌倉班別自主行動がいよいよやってきた。小町通りで美波がはぐれた。俺が探しに行くと言ったら音瀬に睨まれて
「美波にあんな辛い思いさせといてよく探しに行くとか言えるね。最低。」
と言われた。だから音瀬に今までの事実を話した。黒板に書いたのは俺じゃないこと。美波に謝りたいことを。すると音瀬は
「ごめん。今まで勘違いしてて。本当にごめん。」
と謝罪の言葉が帰ってきた。だから俺は急いで美波を探した。もう美波のあんな悲しい顔を見たくなかった。
美波を見つけた。目から涙が溢れていた。そんな美波をおれはとっさに抱きしめていた。俺は今まで美波に言いたかったことを言った。
「ごめん…」
「俺じゃねぇ。」
いざとなると言葉がまとまらない。美波も混乱している。
「だから俺じゃねぇんだ。黒板に書いたの。」
やっと言えた。ずっと、ずっと言いたかった。俺は今にも崩れそうな身体を奮い立たせて美波の目を見つめる。
俺は気の弱いやつが嫌いだ。授業中先生に当てられるとおどおどして顔が茹でダコのように赤くなったり、昼休みの時に並んでいたブランコを横入りされても何も文句を言わなかったり、すべての行動が俺をイライラさせた。なんだよ。ちゃんと嫌なら嫌って言えよな。ほんと、あんなやつ見てるとイラつく。
そんなことを思っている俺があいつに恋をするとは思わなかった。
俺はすぐに思ったことを言ってしまうようなやつだからクラスメイトから嫌われていた。
ある日の授業。
学校の畑に自分たちが育てた野菜を観察するという授業があった。授業も無事終わり教室に帰ろうとするとクラスメイト何人かに呼び止められた。相手の顔を見ると昨日ケンカでボコボコにしたやつだった。名前は忘れた。そいつに体を押されて、思いっきり畑に転んでしまった。1体1でケンカして勝てないからって数人で1人をいじめるのは卑怯だろ。
そんなことを考えていると、突き飛ばしたやつが俺のほうを見てこわばった表情をしていた。相手の視線の方を見ると学校で育てている野菜の茎が折れてしまったのだ。先生に怒られるのが嫌だったのかすぐに教室の方に走っていった。弱いやつ。
俺はすぐにその場に立った。よごれた服を見て思う。せっかくお母さんが買ってきてくれたのにな。足は少し怪我をしていた。もちろん先生は今、俺があいつにやられたことを知らない。職員室に用事があるとかで先に校舎の方に入ってしまったのだ。クラスメイトも何人か畑にのこっていたけれど泥だらけで怪我をしている俺をみんな見て見ぬふりだった。
嫌われている俺に対する態度がそんな感じなのもしかたないと思った。
そんな中、気の弱くて嫌いだったあいつ。
美波は俺の方に駆け寄ってきた。そして泥だらけの服をハンカチでふいてくれたのだ。そして怪我した足に絆創膏を貼ってくれた。あいつは
「痛いの痛いの飛んでけ~!」
とバカみたいに言った。その時の笑顔は今でも忘れない。太陽のように光輝いていた。
俺はこの笑顔で恋に落ちた。この笑顔をずっと守っていこうと決めた。
それから俺は今まで思ったことをすぐ口にしていたが、心を入れ替えて友達に優しくした。そうしたら徐々にクラスに馴染み楽しい学校生活をおくることができた。
小学4年生になった俺は今でも同じクラスの美波が好きだった。そんな俺が学校から帰っていると、前の方に美波と違うクラスの音瀬が歩いていた。二人の会話を俺は盗み聞きしていた。
衝撃の事実が明らかになった。美波は佐藤ひろが好きらしい。頭が真っ白になった。ひろは良い奴だ。俺がクラスメイトから嫌われていた時期によく話しかけてくれた。ひろがいたから学校に行きたいと思った日もよくあった。
だからこそ嫌だった。俺はひろには勝てない。
怒りと悲しみで美波に言ってしまった。
「ひろが好きなんだ。みんなに言っちゃおう。」
俺はみんなに言うつもりは一切なかった。彼女が傷つく姿なんて見たくないから。けど美波は悲しそうにこちらを見ていた。そんな顔で見るなよ。俺の心は今にでも崩れそうだった。俺は目から涙がこぼれないように家まで走った。
運が悪く次の日からインフルエンザにかかってしまい、一週間学校を休まなければならなかった。本当は美波に昨日のことを謝りたかったのに。
一週間後学校に行くと教室の空気がどんよりしていた。美波の席にマイネームペンで悪口がたくさん書かれていた。俺は頭に血がのぼった。
友達に俺が休んでいる間に何があったのかを聞いた。
黒板に美波がひろを好きだということと、ひろに近づく女子は消えろと書かれていたこと。そこから無視されたり、物を捨てられたり、机に悪口が書かれたり。聞いているだけで吐き気がした。
美波は一週間ひとりで苦しみに耐えていたのだ。あの笑顔をまた見たい。俺はこのいじめを無くしてみせる、そう心に決めたのだ。
次の日から俺は学校に早く行った。美波よりも早く学校に行きたかった。悪口を書いている犯人をみつけることと、悪口の書かれた机を綺麗にすることが目的だ。朝一番で学校に行くとすでに机には悪口が書かれていた。きっと昨日の放課後に書いたんだろうと思った。美波が来る前に机を綺麗にした。これからは毎日早く来て机を綺麗にしようと決めた。これぐらいしか美波を救うことができないと思った。
美波が学校に来た。美波は自分の机を見ると安心したのか頬が緩んだ。それを見ていたクラスメイトは面白くないのか美波のいない所で陰口を言った。その会話で最初に黒板にあんなことを書いたのはひろのファンクラブに入っている女王的存在のグループだったらしい。
放課後、美波が帰ったあとに美波をいじめているヤツらを教室に呼んだ。俺はいじめているヤツらに向かって頭をさげたて言った。
「もう美波をいじめないでください。お願いします。」
俺は考えた。もしここで俺がいじめているやつらを殴ったり蹴ったりすることもできる。けどそんなことをしてしまったら美波がもっと酷い目にあってしまう可能性があるからやめた。
いじめをしていたグループのひとりが
「もうあいついじめるのやめる。なんか最近つまらないもん。あいつ全然泣かないし。」
俺は今にでもこいつの顔面を殴りたかったがその気持ちをぐっとこらえて
「あいつのこと次いじめたらどうなるかわかるよな」
と一言ぶつけて教室を出ていった。
もう一度美波としっかり話したかった。美波に謝りたかった。しかし美波は俺を見る度に怖がって目をそらしてしまう。音瀬も俺と目があうと睨まれてしまう。きっと俺にあんなことを言われた次の日に黒板に書かれたからいじめの元凶は俺だと思っているんだな。だから俺はもう美波に近づくことをやめた。
美波はいじめが無くなって前よりずっと笑顔が増えた。だから俺は美波の笑顔を遠くから見守ることにした。
俺の初恋はもうここで終了だと思った。
中学2年生になって同じクラスの美波を見た時俺は思った。また美波と話したい。
謝りたい。
本当は小学生の時に諦めはついていなかったのだ。
自己紹介の時に緊張で噛んでしまった時の顔。小学生の時の頃と変わらず茹でダコみたいに真っ赤で可愛かった。
委員会決めのときくじ引きで俺と美波が一緒に学級委員になったとき。初めて神様っているんだなって思った。めっちゃ嬉しかった。
鎌倉の班決めのとき、どうしても美波と同じ班になりたかった。このことを同じ班の青木竜二と明智健人に美波との過去を話した。そしたら2人が協力してくれて同じ班になる事ができた。
鎌倉班別自主行動がいよいよやってきた。小町通りで美波がはぐれた。俺が探しに行くと言ったら音瀬に睨まれて
「美波にあんな辛い思いさせといてよく探しに行くとか言えるね。最低。」
と言われた。だから音瀬に今までの事実を話した。黒板に書いたのは俺じゃないこと。美波に謝りたいことを。すると音瀬は
「ごめん。今まで勘違いしてて。本当にごめん。」
と謝罪の言葉が帰ってきた。だから俺は急いで美波を探した。もう美波のあんな悲しい顔を見たくなかった。
美波を見つけた。目から涙が溢れていた。そんな美波をおれはとっさに抱きしめていた。俺は今まで美波に言いたかったことを言った。
「ごめん…」
「俺じゃねぇ。」
いざとなると言葉がまとまらない。美波も混乱している。
「だから俺じゃねぇんだ。黒板に書いたの。」
やっと言えた。ずっと、ずっと言いたかった。俺は今にも崩れそうな身体を奮い立たせて美波の目を見つめる。