親友を泣かした私は。
シャボン玉のような心
鎌倉班別自主行動も終わった。
前よりももっと桜ちゃんと美波ちゃんと仲良くなれた気がする。
そんな中、私は最近あることが気になっている。
桜ちゃんの様子が変なのだ。
いつでも元気だった桜ちゃんは最近元気がないように見える。私と桜ちゃんとあおいちゃん3人で話していてもぼーっとしていたり、上の空だったりする。怪しまれないように桜ちゃんに
「最近なんか変わったことあった?」
と聞いても大丈夫と言われるだけで何も手がかりがつかめなかった。
桜ちゃんは、私が辛い時いつでもそばにいてくれるけど、自分が辛い時はひとりで抱えて込んでしまうことがよくあるのだ。
桜ちゃんが学校を休んだ。
別に学校を休むことなんてよくあるだろうと思うけれどなんだか嫌な予感がするのだ。
私たちの関係が―――。
いや、そんなことありえない。
私は首を横に振り考えることをやめた。
今日は学校を休んだ。家族との話し合いがあったからだ。両親の離婚。警察官のお父さんと保育士のお母さん。ふたりは私が小学校低学年ぐらいまでは仲良く生活していた。
なのに。だんだん仲が悪くなって。最初はケンカをしていたりしていた。徐々に話す回数が減っていき、お互いを空気のように扱っていた。そんなふたりと一緒に生活するのはとても息苦しかった。
だいたいはもう決まっている。私はお母さんの方につくことになっている。
話し合った内容は中学生の私にはわからない。けどお母さんと私は今まで通りこの家で暮らし、名字は変わらない。そのぐらいしかわからなかった。
お父さんは10日後に家を出ていくそうだ。私は昔も今もお父さんが大好きだ。お父さんの影響で警察官になりたいと思った。
ある日、お母さんは買い物に行っている間お父さんとふたりきりで話をした。私はいっぱい聞きたいことがあったがいざとなると何を話していいのかわからなかった。先に口を開いたのはお父さんだ。
「ごめん。父さんと母さんが離婚するというのは桜にとって辛いことだろう。中学生という大切な時期にこんなことになって本当に悪いと思っている。でも俺は離婚という選択を選んだ。本当にごめんなっ…。」
お父さんの泣いている姿を初めて見た。強いお父さんの弱い部分。そんなことを考えていた。私は言った。
「お父さん。私、お父さんのこと責めてないし憎んでもない。私ね、お父さんのこと大好きなの。強くて優しいお父さんが…だから責めないよぉ。」
私は涙が溢れてきた。泣かないって決めたのに。もう全部吐き出しちゃおう。お父さんに伝えるチャンスは今しかない。
「お父さん。今から言うことは私の独り言だと思って聞いてくれるぅ…?」
お父さんは苦しそうにこくりと頷いた。
「私はね、大好きだったお父さんとお母さんと3人で一緒にずっと暮らしてたかったぁ…。でもね、それは叶わないって私が成長するにつれて気づいてたのぅ。けどね気づかないフリしてたぁ。私はお父さんが家を出てくのをね止めたいのぉ。止めたいけどおっ…。止める権利は私にないからぁ。お父さんの人生はお父さんのものだからぁ…。」
私は涙でぐしょぐしょの顔を無理やり笑顔にして言う。本当に言いたかった言葉だ。
「お父さん。幸せになってね…。」
お父さんの顔も涙でぐしょぐしょだった。お父さんは私に抱きついて言う。
「桜。ありがとぉう。ごめんなぁ。ありがとぉう。ごめんなぁ。」
お父さんの温もりを久々に感じた。とてもあったかかった。
お父さんが家を出ていった。何かあればいつでも会いに来いと電話番号も住所も教えてくれた。しかし私は多分、お父さんにはもう会わない。私と会うことによって、お父さんはずっと音瀬桜に縛られて人生を歩むことになるだろう。そんな人生歩んでほしくない。残りの人生は自分の好きなように生きてほしいと心から思ったから。
そこから私とお母さんのふたりの生活が始まった。この生活が私を酷く苦しめた。
お母さんは私に対して冷たくなった。今まであんなに優しかったお母さんが。きっとお父さんの存在があったからこそ『優しいお母さん』だったのだろう。お母さんは私と目を合わせることはなくなった。
そして私はどんどん自由を奪われた。まずは家事はすべてやることになった。ここまでは別に辛くなかった。お母さんが今まで苦労した分、私が助けてあげたいと思っていたからだ。
しかしどんどん私の大切なものを奪っていった。
まずは剣道だ。家事は放課後にやるから部活などやめろと言われた。
次は勉強だ。今まで以上に厳しくなった。
次は将来の夢だ。警察官にはなるなと。警察官を目指している私が『あの人』にそっくりだからと言っていた。
私の心は、だんだんと壊れていった――――。
学校には今まで通り行った。学校だけが、私の心を癒してくれる。
私の親友――――白雪美波ちゃん。
彼女の笑顔を見ると、ボロボロの心はどんどん膨らんでいってあたたかい気持ちになるの。今、私の人生の楽しみは美波ちゃんだけだった。
そんなことを考えていると美波ちゃんは教室にいた。最近は私の都合で朝、一緒に行けていない。私は暗い気持ちを押し殺して
「美波ちゃーん!おはよう。」
と普段より明るい声で言った。美波ちゃんも
「桜ちゃんおはようー!」
と笑顔で答えてくれた。何度この笑顔に救われたか。
そんな美波ちゃんを傷つけてしまうとは夢にも思わなかった――。
前よりももっと桜ちゃんと美波ちゃんと仲良くなれた気がする。
そんな中、私は最近あることが気になっている。
桜ちゃんの様子が変なのだ。
いつでも元気だった桜ちゃんは最近元気がないように見える。私と桜ちゃんとあおいちゃん3人で話していてもぼーっとしていたり、上の空だったりする。怪しまれないように桜ちゃんに
「最近なんか変わったことあった?」
と聞いても大丈夫と言われるだけで何も手がかりがつかめなかった。
桜ちゃんは、私が辛い時いつでもそばにいてくれるけど、自分が辛い時はひとりで抱えて込んでしまうことがよくあるのだ。
桜ちゃんが学校を休んだ。
別に学校を休むことなんてよくあるだろうと思うけれどなんだか嫌な予感がするのだ。
私たちの関係が―――。
いや、そんなことありえない。
私は首を横に振り考えることをやめた。
今日は学校を休んだ。家族との話し合いがあったからだ。両親の離婚。警察官のお父さんと保育士のお母さん。ふたりは私が小学校低学年ぐらいまでは仲良く生活していた。
なのに。だんだん仲が悪くなって。最初はケンカをしていたりしていた。徐々に話す回数が減っていき、お互いを空気のように扱っていた。そんなふたりと一緒に生活するのはとても息苦しかった。
だいたいはもう決まっている。私はお母さんの方につくことになっている。
話し合った内容は中学生の私にはわからない。けどお母さんと私は今まで通りこの家で暮らし、名字は変わらない。そのぐらいしかわからなかった。
お父さんは10日後に家を出ていくそうだ。私は昔も今もお父さんが大好きだ。お父さんの影響で警察官になりたいと思った。
ある日、お母さんは買い物に行っている間お父さんとふたりきりで話をした。私はいっぱい聞きたいことがあったがいざとなると何を話していいのかわからなかった。先に口を開いたのはお父さんだ。
「ごめん。父さんと母さんが離婚するというのは桜にとって辛いことだろう。中学生という大切な時期にこんなことになって本当に悪いと思っている。でも俺は離婚という選択を選んだ。本当にごめんなっ…。」
お父さんの泣いている姿を初めて見た。強いお父さんの弱い部分。そんなことを考えていた。私は言った。
「お父さん。私、お父さんのこと責めてないし憎んでもない。私ね、お父さんのこと大好きなの。強くて優しいお父さんが…だから責めないよぉ。」
私は涙が溢れてきた。泣かないって決めたのに。もう全部吐き出しちゃおう。お父さんに伝えるチャンスは今しかない。
「お父さん。今から言うことは私の独り言だと思って聞いてくれるぅ…?」
お父さんは苦しそうにこくりと頷いた。
「私はね、大好きだったお父さんとお母さんと3人で一緒にずっと暮らしてたかったぁ…。でもね、それは叶わないって私が成長するにつれて気づいてたのぅ。けどね気づかないフリしてたぁ。私はお父さんが家を出てくのをね止めたいのぉ。止めたいけどおっ…。止める権利は私にないからぁ。お父さんの人生はお父さんのものだからぁ…。」
私は涙でぐしょぐしょの顔を無理やり笑顔にして言う。本当に言いたかった言葉だ。
「お父さん。幸せになってね…。」
お父さんの顔も涙でぐしょぐしょだった。お父さんは私に抱きついて言う。
「桜。ありがとぉう。ごめんなぁ。ありがとぉう。ごめんなぁ。」
お父さんの温もりを久々に感じた。とてもあったかかった。
お父さんが家を出ていった。何かあればいつでも会いに来いと電話番号も住所も教えてくれた。しかし私は多分、お父さんにはもう会わない。私と会うことによって、お父さんはずっと音瀬桜に縛られて人生を歩むことになるだろう。そんな人生歩んでほしくない。残りの人生は自分の好きなように生きてほしいと心から思ったから。
そこから私とお母さんのふたりの生活が始まった。この生活が私を酷く苦しめた。
お母さんは私に対して冷たくなった。今まであんなに優しかったお母さんが。きっとお父さんの存在があったからこそ『優しいお母さん』だったのだろう。お母さんは私と目を合わせることはなくなった。
そして私はどんどん自由を奪われた。まずは家事はすべてやることになった。ここまでは別に辛くなかった。お母さんが今まで苦労した分、私が助けてあげたいと思っていたからだ。
しかしどんどん私の大切なものを奪っていった。
まずは剣道だ。家事は放課後にやるから部活などやめろと言われた。
次は勉強だ。今まで以上に厳しくなった。
次は将来の夢だ。警察官にはなるなと。警察官を目指している私が『あの人』にそっくりだからと言っていた。
私の心は、だんだんと壊れていった――――。
学校には今まで通り行った。学校だけが、私の心を癒してくれる。
私の親友――――白雪美波ちゃん。
彼女の笑顔を見ると、ボロボロの心はどんどん膨らんでいってあたたかい気持ちになるの。今、私の人生の楽しみは美波ちゃんだけだった。
そんなことを考えていると美波ちゃんは教室にいた。最近は私の都合で朝、一緒に行けていない。私は暗い気持ちを押し殺して
「美波ちゃーん!おはよう。」
と普段より明るい声で言った。美波ちゃんも
「桜ちゃんおはようー!」
と笑顔で答えてくれた。何度この笑顔に救われたか。
そんな美波ちゃんを傷つけてしまうとは夢にも思わなかった――。